2019年6月に発表された「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」で「老後の必要資金は2000万円である」と言及されたことから、多くの人々が危機感を覚えました。

しかし昨今の物価上昇を加味すると老後の必要資金は2000万円では足りないとの指摘があり、仮に物価が年3.5%上昇し続けると仮定すると、4000万円にまで達すると言われています。

当然、支給される年金では不足してしまうため、現役時代からの貯蓄が必須となります。では、実際に65歳以上の方々はどのくらいの貯蓄をしているのでしょうか。

本記事では、2024年5月17日に公表された最新資料より、65歳以上の無職世帯の貯蓄事情について紹介していきます。
記事の後半では、シニア無職世帯の家計収支についても紹介しているのであわせて参考にしてください。

1. 世帯主が65歳以上の無職世帯の平均貯蓄額は2504万円

まずは、世帯主が65歳以上の無職世帯における平均貯蓄額とその内訳を見ていきましょう。

総務省統計局の「家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯の平均貯蓄額は2504万円でした。

貯蓄の内訳は下記のとおりです。

1.1 【貯蓄の内訳】金融機関:2493万円

  • 通貨性預貯金:754万円
  • 定期性預貯金:846万円
  • 生命保険など:413万円
  • 有価証券:480万円
  • うち貸付信託・金銭信託:17万円
  • うち株式:260万円
  • うち債券:51万円
  • うち投資信託:152万円

1.2 【貯蓄の内訳】金融機関外:11万円

金融機関外は11万円となりました。

預貯金が全体の約6割を占めており、安定を重視した貯蓄傾向になっているのがみてとれます。

しかし近年は、低金利環境が長期化しており、預貯金のみでは十分な老後資金を確保することが難しく、さらにインフレリスクも高まっていることから、実質的な資産価値が目減りしてしまう可能性もあります。

また、株式や投資信託などの有価証券の比率は「全体の約2割程度」と低く、「投資はリスクが高い」というイメージが依然として強いことが要因として考えられます。