物価や金利が上昇するなかで、実質賃金は前年度比2.2%減と「偽インフレ」の状態が続いています。

そのなかで、国民が大きな期待を寄せるのが、6月から開始される「定額減税」です。

定額減税により、手取り収入額は増加します。しかし、減税額は人によって異なります。

「私はいくら税負担が減るのだろう」と気になっている人もいるでしょう。

この記事では、定額減税によって増える手取り収入について、シミュレーションを交えながら解説します。

1. 6月から定額減税がスタート

定額減税の概要は、以下のとおりです。

【写真1枚目/全6枚】定額減税の概要。次ページ以降で単身世帯・家族世帯の具体的な手取り額の増減をシミュレーション!1/6

定額減税の概要

出所:国税庁「定額減税について」首相官邸「第二百十二回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説」国税庁「No.2875 居住者と非居住者の区分」をもとに筆者作成

政府の定額減税に関する施策は、すでに減税額や具体的なスケジュールが公表されています。具体的な内容をおさらいしましょう。

1.1 定額減税の減税額

定額減税の減税額は、以下のとおりです。

  • 所得税:3万円
  • 住民税:1万円

所得税・住民税あわせて4万円が年間税額から差し引かれます。

国内に居住する本人に加えて、生計を共にする配偶者や扶養親族の分についても減税の対象です。

ただし、減税合計額が本人の所得税額を超える場合は、所得税額分までが減税されます。

1.2 減税のスケジュール

減税が始まる時期は、人によって異なります。パターン別の減税開始時期は以下のとおりです。

減税スケジュール2/6

減税スケジュール

筆者作成

多くの人が、6月から減税の恩恵を受けられます。

ただし、事業所得を受け取っている人の所得税や年金を受け取っている人の住民税は、減税されるタイミングが秋・冬以降にずれ込みます。

個人事業主や年金受給者は、会社員と減税のタイミングが一部異なることをおさえておきましょう。

2. 定額減税で給与からの手取りはいくら増える?シミュレーション

定額減税により、私たちの給与から手取りはいくら増えるのでしょうか?会社員の単身世帯と家族世帯を例に、おおよその手取りアップ額をシミュレーションしてみましょう。

2.1 単身世帯

単身世帯のシミュレーションモデル情報は以下のとおりです。

定額減税の単身世帯モデル3/6

定額減税の単身世帯モデル

筆者作成

上記の内容で定額減税後の手取り収入をシミュレーションすると、手取り収入額は以下のようになります。

定額減税後の手取り収入シミュレーション(単身世帯)4/6

定額減税後の手取り収入シミュレーション(単身世帯)

筆者作成

手取り収入額は、6月が1万9000円、7月が5000円、8月から10月までは5800円増加します。

単身世帯の場合、減税される額は所得税が3万円、住民税が1万円です。

所得税が毎月6000円だと、6月から10月までの5ヶ月間減税を受けられます。

住民税は年額に対して1万円が差し引かれます。

6月分は徴収されず、7月以降は減税後の税額を11ヶ月で割った金額が徴収される仕組みです。

住民税の端数については7月にまとめて徴収されます。

住民税が月額1万3000円の場合、年額は15万6000円、減税後の税額は14万6000円です。

よって、6月は1万3000円全額が差し引かれ、7月は1万4000円、8月から翌年5月までは1万3200円の税負担が発生します。

なお、上記のモデルでは11月以降に所得税減税が終了するため、手取り収入額が5月時点と比べて減少してしまいます。

減税の恩恵を受けられるのが数ヶ月間のみの人もいることをおさえておきましょう。

2.2 家族世帯

家族世帯のシミュレーションモデル情報は以下のとおりです。

定額減税の家族世帯モデル5/6

定額減税の家族世帯モデル

出所:筆者作成

上記の内容で定額減税後の手取り収入をシミュレーションすると、手取り収入額は以下のようになります。

定額減税後の手取り収入シミュレーション(家族世帯)6/6

定額減税後の手取り収入シミュレーション(家族世帯)

出所:筆者作成

手取り収入額は6月が3万円、7月から12月までは1万2000円増加します。

加えて、所得税の減税額をすべて控除しきれないため、2万円の調整給付も受けられます。

3人家族の場合、減税される額は所得税が9万円、住民税が3万円です。

所得税が毎月1万1000円の場合、12月まで毎月減税を受けられます。

合計7万7000円の減税となりますが、まだ1万3000円差し引かれる分が残っています。

残った金額については、6月以降に調整給付として支給されます。

調整給付は1万円未満の端数を切り上げるため、給付額は2万円です。

住民税は、年額が22万8000円のため、3万円差し引かれると19万8000円となります。

11ヶ月で割った額は1万8000円で、負担額は5月よりも1000円少なくなります。

このように、収入や世帯人数によっては、調整給付や税負担額の減少など、減税による恩恵を十分受けられる可能性があります。

次章では「定額減税」にまつわるよくある質問を、元公務員である筆者が解説しています。

3. 定額減税のよくある質問

定額減税に関する質問・疑問をまとめました。定額減税は複雑な制度です。少しずつ理解を深めていきましょう。

3.1 定額減税で引ききれないお金はどうなりますか?

定額減税で引ききれないお金が発生した際は、引ききれなかった分を「調整給付」として支給します。

給付は1万円未満の端数を切り上げるため、本来減税されるはずだった金額よりも多い金額を受け取れます。

調整給付の日程は、住んでいる自治体から別途案内されます。

自治体からの郵便物を見逃さないようにしてください。

3.2 年度途中で103万円の壁を超えたらどうなりますか?

年度途中で扶養している親族の収入が103万円を超えた場合、年末調整で減税額が調整されます。

その年の12月31日の情報が正しいものとみなされるためです。

たとえば、夫婦で6万円の所得税減税を受けていた世帯で、扶養に入っていた妻のパート年収が103万円を超えたとしましょう。

この場合、夫の職場の年末調整で減税額が調整され、妻の減税分として差し引かれていた3万円が徴収されます。

4. 増えた手取りを有効活用しよう

定額減税は、物価高騰対策として昨秋から掲げられてきた施策の一つです。

1人あたり4万円の減税で、個人の消費増や経済活性化が期待されています。

しかし、住民税の特別徴収では本来12ヶ月で割るべき金額を11ヶ月で割って徴収するため、6月以降は例年よりも多い金額を納めなければいけない人もいます。

加えて、税金は一律で減額されるわけではありません。

複雑な仕組みがかえって減税の恩恵を実感しにくくなっているともいえます。

直接的な給付ではないため実感は湧きにくいかもしれませんが、6月からは自由に使えるお金が幾分か増えます。

増えた手取り分は資産運用にまわしたり、プチ贅沢や自己投資などの個人消費に充てたりして、有効に使いましょう。

参考資料

石上 ユウキ