3. 繰下げ受給のデメリット2.税金と社会保険料が高額になる

繰下げ受給のデメリット2つ目は、税金と社会保険料が高額になることです。繰下げ受給を利用して年金の受給額面を増やせば、その分税金と社会保険料の負担率が重くなります。

例えば、以下の条件で「月15万円」年金をもらう人と「月20万円」年金をもらう人の税金と社会保険料を比較してみましょう。

  • 東京都練馬在住の独身70歳
  • 収入は年金のみ。
  • 基礎控除と社会保険料控除のみを適用(生命保険料控除や地震保険控除などはなし)

計算の結果は以下のとおりです。

年金受給額「月15万円」の税金と社会保険料をシミュレーション

年金受給額「月15万円」の税金と社会保険料をシミュレーション

出所:筆者作成

年金月15万円(年180万円)にかかる税金と社会保険料

  • 所得税:年4000円
    (180万円ー110万円(公的年金所得控除)ー48万円(基礎控除)ー約15万円(社会保険料控除))×5.105%(所得税率)
  • 住民税:年1万5000円
    (180万円ー110万円(公的年金所得控除)ー43万円(基礎控除)ー約15万円(社会保険料控除))×10%(住民税率)ー2500円(調整控除額)+5000円(均等割額)
  • 国民健康保険料:年6万4000円
  • 介護保険料:年8万6000円
  • 手取り:年163万2000円(月13万6000円)
    180万円ー3000円(所得税)ー1万5000円(住民税)ー6万4000円(国民健康保険料)ー8万6000円(介護保険料)

年金受給額「月20万円」の税金と社会保険料をシミュレーション

年金受給額「月20万円」の税金と社会保険料をシミュレーション

出所:筆者作成

年金月20万円(年240万円)にかかる税金と社会保険料

  • 所得税:年2万8000円
    (240万円ー110万円(公的年金所得控除)ー48万円(基礎控除)ー約27万円(社会保険料控除))×5.105%(所得税率)
  • 住民税:年6万3000円
    (180万円ー110万円(公的年金所得控除)ー43万円(基礎控除)ー約27万円(社会保険料控除))×10%(住民税率)ー2500円(調整控除額)+5000円(均等割額)
  • 国民健康保険料:年16万6000円
  • 介護保険料:年10万4000円
  • 手取り(年間):年204万円(月17万円)
    240万円ー2万8000円(所得税)ー6万3000円(住民税)ー16万6000円(国民健康保険料)ー10万4000円(介護保険料)

額面月15万円の場合、税金と社会保険料を引いた手取りは月13万6000円で、手取り率は90.7%となっています。一方で、額面月20万円の場合、税金と社会保険料を差し引いた手取りは月17万円で、手取り率は85%です。

やはり、額面の年金が高額になるほど、税金と社会保険料の負担割合が高くなることがわかります。

4. 年金受給額をシミュレーションしよう

本記事では年金の繰下げ受給について解説しましたが、もともとの年金受給額は人それぞれです。

現役時代の年収や勤務期間によって、受給額が決まります。人によっては、わざわざ繰下げ受給をしなくても高額な年金をもらえる場合もあるでしょう。

そのため、まずは自分が老後にどれくらいの年金をもらえるのかシミュレーションしてみてください。日本年金機構の「ねんきんネット」を使えば、簡単にシミュレーションが可能です。

参考資料

苛原 寛