2024年5月23日、岸田文雄首相が議長を務める経済財政諮問会議が開かれ、高齢者の定義を「5歳延ばす」ことを提言しました。

また、国民年金の保険料について5年間延長する案も出ており、これからのシニアの社会保障については世間でも不安の声が広がっています。

年金だけで生活することが難しくなってきた昨今では、働きながら年金も受給するという方も少なくありません。

現在の日本では給与と年金、両方の所得について課税される仕組みになっています。

本記事では、現役世代の老後に向けた働き方に関する意識調査の結果を見ながら、年金から天引きされるお金について解説していきたいと思います。

記事の後半では、現役ファイナンシャルアドバイザーの筆者が老後に向けた資産形成についても紹介するので、参考にしてみてください。

1. 50歳代の6割以上が「定年後も働く」意向あり

【写真1枚目/全4枚】50歳代が定年後も働く目的/以降は公的年金のしくみや今話題の定額減税について解説1/3

定年以降に働く目的

出所:ヒューマンホールディングス株式会社「ヒューマングループ50代従業員のSELFing(セルフィング)」

「老後2000万円問題」が注目を浴びたことからも、人々の関心が高い定年後の生活。

4月19日、人材会社のヒューマン・ホールディングス株式会社が自社の50歳代従業員に向けた調査の結果を公開しました。

調査概要は以下の通りです。

<調査概要>

  • 期間:2024年3月26日~3月28日
  • 対象:全国/会社員(正社員)・公務員・団体職員として勤務する50歳~59歳男女
  • 回答数:1000名
  • 方法:インターネット調査
  • リリース公開日:2024年4月19日

※調査結果の構成比は小数点以下を四捨五入して算出しているため、合計値は必ずしも100%とはなりません

調査から、50歳代の63.4%が「定年以降も働こうと考えている」と回答しました。

また、定年以降も働こうと考えている634名に対し「何歳まで働こうと考えているか」を質問したところ、「66歳~70歳(35.2%)」が一番多く、次いで「61歳~65歳(31.1%)」という結果となりました。

「定年以降に働く目的」について聞いたところ、7割近くの人が「生活費を稼ぐ(67.8%)」ことを理由に挙げています。

上記から、50歳代は定年後も働く意向が高まっており、その多くは生活費を稼ぐために働くようです。

国民年金の保険料納付機関が5年間延長される案も検討が進んでいる中、就業しながら年金を受給するシニアが増えていくことが考えられます。

給与から天引きされている税金ですが、年金の受給が開始してからも、同じく天引きされてしまうのでしょうか。

ここからは、給与と年金に関する税金の仕組みについて見ていきましょう。

2. 年金と給与の両方から「住民税」が引かれる

所得が一定額以上になった場合、住民税が課税されます。年金受給者の場合は年金から住民税が天引きされることがあります。

これを「特別徴収」といいますが、これは地方税法第321条の7の2により定められている内容になります。

一方で、働き世代は給与から住民税が天引きされているかと思いますが、これについても地方税法第321条の3第1項により定められています。

このことから、給与収入と年金収入の両方があり、かつどちらも住民税の課税対象となる所得に達する場合は、その両方から天引きされるということになります。

ただし、公的年金に係る住民税を給与からの特別徴収とすることはできず、またその逆も同じです。

なお、年金から天引きされるのは住民税のみならず、保険料なども徴収されます。

次章からは、年金から天引きされる4つのお金についてみていきましょう。

3. 公的年金から天引きされるお金とは?

厚生年金や国民年金から天引きされるお金は主に4つです。

ここからは、住民税以外に天引きされるお金について解説していきます。

3.1 所得税および復興特別所得税

年金所得が一定額以上の方は、年金から源泉徴収される「所得税」と「復興特別所得税」が適用されます。

65歳未満の方は年金108万円以下、65歳以上の方は年金158万円以下の場合、所得税は非課税になります。

ただし、給与所得がある場合は確定申告が必要であり、所得税が課税される可能性があります。

障害年金や遺族年金は非課税となります。

3.2 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料

年金支給額が年間18万円以上の方は、健康保険料も年金から天引きされます。

65歳以上75歳未満の方は国民健康保険料が天引きされますが、75歳以上の方は後期高齢者医療制度の健康保険に切り替わります。

後期高齢者医療制度は原則として75歳以上の方が対象ですが、65歳以上75歳未満の方で重度障害等を有する人も選択的に加入することができます。

3.3 介護保険料

介護保険料は65歳以降からは単独で支払うことになり、年金の支給額が18万円以上の人は、年金から天引きされます。

なお、税金や保険料が一定の要件で天引きにならないこともあります。

介護保険料については、ご自身が介護サービスを受けることになっても保険料の支払い義務が残るのが特徴です。

なお、年金の受給が始まっている方については「年金振込通知書」で実際の受給額を確認できるため、一度見ておいてもよいでしょう。

ここまで、年金から引かれるお金について紹介してきました。

年金の「額面」と「手取り額」が異なることについて理解を深めてきましたが、では現代シニアは実際にいくらほどの年金を受給しているのか「額面」を見てみましょう。

4. 【一覧表】「厚生年金」の月額平均は額面でいくら?

ここからは、厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金の実際の受給額を見ていきます。

※厚生年金の金額には、国民年金部分も含まれています。

4.1 厚生年金の平均受給月額

  • 〈全体〉平均年金月額:14万3973円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万4878円

※国民年金部分を含む

4.2 厚生年金月額階級別の老齢年金受給者数

【厚生年金】月額階級別の老齢年金受給権者数2/3

【厚生年金】月額階級別の老齢年金受給権者数

出所:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 1万円未満:6万1358人
  • 1万円以上~2万円未満:1万5728人
  • 2万円以上~3万円未満:5万4921人
  • 3万円以上~4万円未満:9万5172人
  • 4万円以上~5万円未満:10万2402人
  • 5万円以上~6万円未満:15万2773人
  • 6万円以上~7万円未満:41万1749人
  • 7万円以上~8万円未満:68万7473人
  • 8万円以上~9万円未満:92万8511人
  • 9万円以上~10万円未満:112万3972人
  • 10万円以上~11万円未満:112万7493人
  • 11万円以上~12万円未満:103万4254人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5662人
  • 13万円以上~14万円未満:92万5503人
  • 14万円以上~15万円未満:95万3156人
  • 15万円以上~16万円未満:99万4044人
  • 16万円以上~17万円未満:104万730人
  • 17万円以上~18万円未満:105万8410人
  • 18万円以上~19万円未満:101万554人
  • 19万円以上~20万円未満:90万9998人
  • 20万円以上~21万円未満:75万9086人
  • 21万円以上~22万円未満:56万9206人
  • 22万円以上~23万円未満:38万3582人
  • 23万円以上~24万円未満:25万3529人
  • 24万円以上~25万円未満:16万6281人
  • 25万円以上~26万円未満:10万2291人
  • 26万円以上~27万円未満:5万9766人
  • 27万円以上~28万円未満:3万3463人
  • 28万円以上~29万円未満:1万5793人
  • 29万円以上~30万円未満:7351人
  • 30万円以上~:1万2490人

厚生年金は会社員や公務員などが加入する年金で、国民年金に上乗せする形で支給されます。

働き方や加入期間によって受給額が異なりますが、一覧表を見ているとボリュームゾーンは「9~11万円未満」「16~18万円未満」という方が多いようです。

続いて、国民年金の月額一覧をチェックしていきましょう。

5. 【一覧表】「国民年金」の月額平均は額面でいくら?

同じく厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、次は国民年金の平均受給額を確認します。

5.1 国民年金の平均月額

  • 〈全体〉平均年金月額:5万6316円
  • 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万4426円

5.2 国民年金月額階級別の老齢年金受給者数

【国民年金】月額階級別の老齢年金受給権者数3/3

【国民年金】月額階級別の老齢年金受給権者数

出所:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 1万円未満:6万5660人
  • 1万円以上~2万円未満:27万4330人
  • 2万円以上~3万円未満:88万1065人
  • 3万円以上~4万円未満:266万1520人
  • 4万円以上~5万円未満:465万5774人
  • 5万円以上~6万円未満:824万6178人
  • 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
  • 7万円以上~:178万3609人

ボリュームゾーンを見ると、「6万円以上~7万円未満」の受給者がもっとも多いようです。

国民年金の保険料は一律であり、著しく未納が多いケースを除けば満額が支給されます。

参考までに2024年度の国民年金の満額は「6万8000円」ですので、ほとんどの方が満額に近い金額を受け取っているといえそうです。

ただし、国民年金は満額であっても「生活費に足りうる水準か」と聞かれると不足感を覚えるでしょう。

次章では、筆者が考える老後の備えについても少しお話しておきたいと思います。

6. 元金融機関勤務の筆者が考える「老後の備え」

ここからは、元金融機関勤務の筆者が考える「老後の備え」について解説します。

6.1 年金の繰下げ受給

そもそも年金自体の金額を増やそうと思うと、付加保険料や繰下げ受給で公的年金を増やす方法もあります。

年金の繰下げ受給は、年金を受給開始する年齢を遅らせることで、より高い年金額を受け取ることができる制度です。

通常、年金を受給開始する年齢が遅いほど、受給額が増えます。

そのため、70歳から年金を受給する場合は、65歳から受給する場合よりも受給額が増えることがあります。

ただし、具体的な増額率や受給開始年齢によって異なるため、個々のケースによって得になるかどうかは異なる可能性があります。

また、受給開始年齢を遅らせることで、受給年数が減るため、その点も考慮する必要があります。

年金を繰下げ受給して増やす方法以外の資産形成として、次のような方法があります。

6.2 NISAやiDeCo

国が用意している制度である新NISAやiDeCoを用いて資産を増やす方法もあります。

どちらも税制優遇の制度となっており、資産を増やすと同時に節税の効果も期待できるものです。

ただ、iDeCoや新NISAは株や投資信託での資産運用となり、元本割れリスクが伴います。

とくに投資初心者の方は銘柄選びなどで迷うこともあるでしょう。そのため、自分自身の意向に合った銘柄選びのための情報収集が大切になってきます。

なお、老後資金を貯めている最中に大きな病気をしたり介護状態になったりすると、iDeCoや新NISAの積み立てをストップせざるを得なくなるケースもあります。

そういったときに役立つのが、投資機能と保障機能を兼ね備えた保険商品です。

6.3 保険商品

変額保険や外貨建て保険を用いることで、がんになったり、介護状態になっても保障を受けながら投資を続けられるというメリットがあります。

とくに外貨建ての保険商品は返戻率が高いものも多く、老後に向けた資産形成として保険商品を選ぶ方も多いです。

日本円の価値が低下している昨今、資産の一部を外貨にしてもつことが非常に重要視されています。

もしも資産運用や保険のことで迷ったら筆者をはじめとしたお金のプロに、いつでもご相談いただければと思います。

7. まとめにかえて

今回は働き世代の意識調査の結果から、現代シニアの年金事情について解説してきました。

就業しながら年金を受け取るシニアが増えていくことが予想されるなか、税負担はこれまで以上に重くのしかかってくるでしょう。

厚生年金と国民年金の一覧表からもあった通り、年金だけで老後生活を送ることは難しくなってきています。

安心して老後を迎えるためには、繰下げ受給して年金額を増やしたり、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用して資産形成するのもひとつの方法です。

日本円の価値が下がってきていることから、円以外の資産をもつ層が増えてきており、貯蓄と投資の両方を兼ね備えた外貨建ての保険商品も人気が高まっています。

「これから貯蓄したいけど、何から始めたらいいかわからない」という方は、一度お金のプロに相談してみてはいかがでしょうか。

参考資料

筒井 亮鳳