人生100年時代と言われている現代では、定年退職後も働くシニア世代が増えつつあります。
実際に総務省の「統計からみた我が国の高齢者」によると、高齢者の就業率は65〜69歳で50.8%、70〜74歳で33.5%であり、いずれも過去最高となっています。
「働きながら年金を受け取れば、より老後生活が豊かになる」と思ってしまいますが、実は労働収入が多いと年金の一部または全額がカットされてしまうのです。
本記事では、働きながら年金を受け取る際に必ず知っておきたい「在職老齢年金の仕組み」について詳しく解説していきます。
「2024年度の最新情報」や、現在議論されている「在職老齢年金の廃止」についても紹介しているので、あわせて参考にしてください。
1. 在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは、厚生年金に加入している人が、老後に働きながら年金を受け取る際、年金の支給額を減額または全額停止にする仕組みのことです。
支給停止のボーダーラインとなる基準額を「支給停止調整額」といい、このボーダーラインを超えた場合は、年金額がカットされます。
具体的な計算方法は下記のとおりです。
在職老齢年金による調整後の年金支給月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)÷2
用語の説明
基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額
総報酬月額相当額
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
※上記の「標準報酬月額」、「標準賞与額」は、70歳以上の方の場合には、それぞれ「標準報酬月額に相当する額」、「標準賞与額に相当する額」となります。
給与額が高くなればなるほど、言わば「高収入」であるほど、年金がカットされる仕組みになっているのです。
「老後も働きたい」と考えている方は、働くことによって「年金がカットされる」可能性もあるため、在職老齢年金を必ず意識しておく必要があります。
なお、支給停止のボーダーラインである「支給停止調整額」が、2024年度は大幅に上がりました。
次章にて詳しく見ていきましょう。