4. 国家公務員を退職した後に抱える「生活苦」
人事院が2024年3月に公表した「令和5年 退職公務員生活状況調査報告書」によると、多くの国家公務員が定年退職後に生活苦を抱えていることがわかります。
退職公務員の世帯の収入(ボーナス収入を含まない。以下同じ。)は平均で月額37万円、平均支出月額は34万9000円でした。
彼らに「世帯の家計の状況」を問う項目では、「毎月のやりくりに苦労しており、時々赤字が出る」(23.3%)と「どうやりくりしても、常に赤字が出て生活が苦しい」(18.2%)が合わせて41.5%にのぼりました。
赤字が出る家庭は「退職手当を取り崩す」が70.5%と多くなっており、退職金に頼ることが多いようです。
退職金の使い道として「住宅ローンの一括返済」などを検討している方は、生活費の補填として残しておく必要があるかもしれないと知っておきましょう。
もちろん、これらは平均なので実際の収支は家庭によりさまざまです。大切なのは、「定年退職後」の収入と支出をシミュレーションし、備えておくことです。
5. まとめにかえて
いつの時代も、「子どもや孫に就いてほしい」と人気のある公務員という職業。
たしかに退職金や年収は”平均ベースで”上回っているものの、もちろん個人差があります。
また、退職金は今時点で平均が2000万円を超えていますが、今後も同水準が保証されているわけではありません。
実際には生活苦を抱える元国家公務員が少なくないことから、どんな職業についても「老後に向けたシミュレーション」が必須になるでしょう。
5.1 参考:国家公務員の退職金を勤続年数別に比較
参考までに、国家公務員が定年退職時に受け取る退職金は、勤続年数により金額が変わります。
勤続年数ごとの平均額を最後に確認しましょう。
【常勤職員】
- 5年未満:158万7000円
- 5年~9年:446万8000円
- 10年~14年:713万7000円
- 15年~19年:1159万1000円
- 20年~24年:1309万2000円
- 25年~29年:1663万2000円
- 30年~34年:1991万7000円
- 35年~39年:2303万8000円
- 40年以上:2234万7000円
【うち行政職俸給表(一)適用者】
- 5年未満: 84万8000円
- 5年~9年:451万8000円
- 10年~14年:675万7000円
- 15年~19年:1016万6000円
- 20年~24年:1352万4000円
- 25年~29年:1625万6000円
- 30年~34年: 2037万円
- 35年~39年:2189万1000円
- 40年以上:2139万1000円
参考資料
太田 彩子