ハリルホジッチ・サッカー日本代表元監督が2か月後にロシアで開催されるFIFAワールドカップ(W杯)を前に解任されました。このことは多くの人にサプライズとして受け止められ、連日報道が続いています。
その議論の中心は、ハリルホジッチ元監督の解任の理由や、その後任として日本サッカー協会の技術委員長であった西野朗氏が新監督に就任したことなどです。こうしたことは日本の企業でも起きるのでしょうか。今回はコーポレートガバナンスの観点も含めて考えていきましょう。
西野朗監督就任に違和感を感じる背景とは何か
ハリルホジッチ元監督の解任劇をめぐる議論は、W杯を目の前にして行われたこと、またハリルホジッチ監督とともにA代表をサポートし、その強化をともに図っていたはずの西野朗元技術委員長が今回は責任を取ることなく、後任として日本代表の新監督に収まったのはなぜかということに集中しています。
この一見すると複雑そうに見える議論も、「誰が誰のボスで、誰が誰に雇われているのか」を考えれば比較的理解がしやすいと思います。
A代表監督といえども、日本サッカー協会に招聘されて、その任務に就いているわけです。つまり、ハリルホジッチ元監督と日本サッカー協会の契約内容の詳細はさておき、ハリルホジッチ元監督の上司は日本サッカー協会です。
また、そのサッカー協会の中で実質的にA代表の強化から監督のスクリーニングなどを行っているのが技術委員会だとするならば、技術委員長の西野氏はハリルホジッチ元監督のサポート役というよりは、むしろ間接的な上司、または現場での上司であったともいえます。
こう考えれば、今回は外部から招聘した人材が雇い主の期待通りに機能しないと、現場も田嶋幸三日本サッカー協会会長も判断し、解任を決めたのにすぎないということが分かります。
技術委員長であった西野氏が新監督として就任するのは不合理か
では、西野氏が新監督に就任したことはどう考えればいいのでしょうか。
もし西野氏がハリルホジッチ元監督のスタッフであれば、一緒に解任されるということになるのでしょうが、西野氏は日本サッカー協会の技術委員長なので立場は逆です。外部から雇ってきた監督が機能しないかどうかを査定する側です。
この点、選手とのコミュニケーション問題も含め、日本サッカー協会が期待した通りに機能しないという理由でハリルホジッチ元監督を解任したのであれば、A代表の強化を図ってきた西野氏にはそうした監督に仕事を続けさせた責任があるのではないか、という指摘はあろうかと思います。これはもっともな指摘です。
ただ、話を一見ややこしく見せているのは、西野氏が日本代表監督を評価する側、つまり技術委員長であったことに加え、アトランタ五輪やガンバ大阪などで実績のある監督経験者だったということです。