「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の改正(2021年4月1日)によって、事業主には70歳までの定年の引上げ、70歳まで継続的に事業に従事できる制度の導入などの検討が求められるようになりました。
現在は年金受給開始年齢である65歳で仕事を辞める人が多い傾向にあるものの、昨今における社会状況を見ていると将来的には70歳までの就業が主流になるのではないかとも思えてきます。
また現在は、65歳から年金を受給できますが、若者の中には「自分たちは年金を何歳からもらえるのだろうか?」「会社に頼らずとも稼げるスキルを身に付けないといけない」と不安に思う人も珍しくありません。
本記事では、現代シニアの年金事情や70歳代の就業事情などについて見ていきましょう。記事の後半では、
1. 現在の年金世代の生活も厳しい傾向にある
近年、若い世代を中心に「高齢者はお金をもっている」「年金が多くてうらやましい」という先入観があります。一方、メディアでは高齢者の貧困問題も連日取り上げられています。
実際のところ、年金世帯はどのくらいの年金を受給しているのでしょうか。
1.1 【国民年金】全体平均は「5万6368円」男女別の受給状況
厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」における国民年金の受給者の金額別分布は以下の通りです。
国民年金の平均年金月額:5万6368円
- 〈男女全体〉国民年金の平均年金月額:5万6368円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9013円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4346円
〈男女全体〉国民年金の受給額分布
- 1万円未満:7万27人
- 1万円以上~2万円未満:28万4152人
- 2万円以上~3万円未満:90万3006人
- 3万円以上~4万円未満:274万9550人
- 4万円以上~5万円未満:463万6048人
- 5万円以上~6万円未満:791万730人
- 6万円以上~7万円未満:1500万3006人
- 7万円以上~:187万2466人
現役時代、フリーランスや個人事業主だった人は「国民年金」に加入しています。
国民年金の受給者でもっとも多い受給金額は6〜7万円。次いで、5〜6万円と続きます。
仮に、年金受給額を7万円とすると、健康かつ持ち家であればなんとか暮らしていくことはできるでしょう。しかし、賃貸住宅の場合は家賃も発生し、衣食住を補うのに年金だけでは不十分な金額かもしれません。
1.2 【厚生年金】全体平均は「14万3965円」男女別の受給状況は?
一方、同資料における厚生年金の受給者の金額別分布は以下の通りです。
厚生年金保険(第1号)の平均年金月額:14万3965円
- 〈男女全体〉厚生年金保険(第1号)の平均年金月額:14万3965円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3380円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4686円
- ※国民年金の金額を含む
〈男女全体〉厚生年金保険(第1号)の受給額分布
- 1万円未満:9万9642人
- 1万円以上~2万円未満:2万1099人
- 2万円以上~3万円未満:5万6394人
- 3万円以上~4万円未満:10万364人
- 4万円以上~5万円未満:11万1076人
- 5万円以上~6万円未満:16万3877人
- 6万円以上~7万円未満:41万6310人
- 7万円以上~8万円未満:70万7600人
- 8万円以上~9万円未満:93万7890人
- 9万円以上~10万円未満:113万5527人
- 10万円以上~11万円未満:113万5983人
- 11万円以上~12万円未満:103万7483人
- 12万円以上~13万円未満:94万5237人
- 13万円以上~14万円未満:91万8753人
- 14万円以上~15万円未満:93万9100人
- 15万円以上~16万円未満:97万1605人
- 16万円以上~17万円未満:101万5909人
- 17万円以上~18万円未満:104万2396人
- 18万円以上~19万円未満:100万5506人
- 19万円以上~20万円未満:91万7100人
- 20万円以上~21万円未満:77万5394人
- 21万円以上~22万円未満:59万3908人
- 22万円以上~23万円未満:40万9231人
- 23万円以上~24万円未満:27万4250人
- 24万円以上~25万円未満:18万1775人
- 25万円以上~26万円未満:11万4222人
- 26万円以上~27万円未満:6万8976人
- 27万円以上~28万円未満:3万9784人
- 28万円以上~29万円未満:1万9866人
- 29万円以上~30万円未満:9372人
- 30万円以上~:1万4816人
「厚生年金」は、公務員やサラリーマンが対象となる年金制度です。
厚生年金の受給額のボリュームゾーンは男女で異なります。男性は17万円前後の年金を受給している人が最も多く、女性は9万円前後を受給する人がもっとも多いとわかります。
女性は男性よりも受給額が少ない傾向にありますが、パートナーがいる女性も含まれるためです。また、現在の年金世代は正社員で働き続ける女性が少なかったため、受給額は少ない傾向にあります。
今後、女性の年金受給額の分布は少しずつ変化していくはずです。
次の章からは、現代の60歳代シニアが考える「将来的に望ましい定年年齢」などの就業への意識を探っていきましょう。