「会社員だった夫が亡くなって遺族年金を受け取っていますが、65歳になって老齢年金を受給できるようになると老齢年金と遺族年金は同時に受け取れるのでしょうか?」(60歳代女性・独身)
という質問が届きました。公的年金には1人1年金の原則があるため、複雑に感じる方もいるでしょう。
2024年度の年金は2.7%の増額となるものの、物価上昇率には追いつけないため実質的には目減りに。
多いとはいえない年金額だからこそ、制度を正しく知って備える必要があります。
本記事では、65歳以降の老齢年金と遺族年金の併給について解説します。
65歳時の手続きについても紹介しますので、遺族年金を受け取っている人は確認しておきましょう。
1. 1人1年金の原則
公的年金(老齢年金や遺族年金、障害年金)には、「1人1年金の原則」があります。
複数の年金の受給権を有する場合、1つを選択して年金を受給するというものです。
つまり、受給権はあっても2つ以上の年金は受け取れません。
2. 65歳以上になれば年金を併給できる
1人1年金の原則により複数の年金受給権を有する場合、原則1つを選択して年金受給することになりますが、65歳以上になれば例外的に複数の年金を受給することも可能です。
ただし、65歳以上で複数の年金受給権がある場合、主な受け取り方は次の通りです。
2.1 ケース1:老齢基礎年金と遺族厚生年金の受給権がある場合
- 老齢基礎年金+遺族厚生年金
2.2 ケース2:老齢(基礎・厚生)年金と障害(基礎・厚生)年金の受給権がある場合
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+障害厚生年金
- 障害基礎年金+老齢厚生年金
2.3 ケース3:障害(基礎・厚生)年金と遺族厚生年金の受給権がある場合
- 障害基礎年金+障害厚生年金
- 障害基礎年金+遺族厚生年金
3. 妻が自営業なら遺族年金と老齢年金の両方を受け取れる
遺族厚生年金を受給している妻が自営業で、国民年金の加入者(厚生年金の加入なし)ならば、妻は夫の遺族厚生年金と自分の老齢基礎年金を両方とも受給できます。
ただし、65歳までの遺族厚生年金に加算されていた「中高齢寡婦加算」がなくなるため、年金額は大きく増えません。
遺族厚生年金の基本金額(原則夫の老齢厚生年金の3/4)を100万円、妻の老齢基礎年金を70万円とした場合、65歳までに受け取る年金と65歳以降に受け取る年金は次の通りです。
- 65歳まで:遺族厚生年金(100万円)+中高齢寡婦加算(59万6300円)=159万6300円
- 65歳以降:遺族厚生年金(100万円)+老齢基礎年金(70万円)=170万円
上記のケースでは、老齢基礎年金を受け取れるようになっても年金の総受給額は、中高齢寡婦加算がなくなるため10万円くらいしか増えません。
老齢基礎年金が少ない場合、65歳以降の総受給額は減額になることもあります。
では、妻が自営業の場合はどのような手続きになるのでしょうか?次章で確認しましょう。「妻が厚生年金に加入していても年金額はあまり増えない」理由についても解説します。