就職活動が本番を迎えています。そこで、久留米大学商学部の就職支援責任者である塚崎公義教授の保護者向けアドバイスを紹介します。
今の就活は長くて辛い
大学3年生の保護者の皆様、ご子息やご息女が今まさに格闘されている就職活動は、とても辛くて長いものです。保護者の方が大卒で就職活動をされたという場合には、当時と今では全く事情が異なるのだ、ということを最初にはっきり認識していただく必要があります。
最大の違いは、就活の期間の長さです。3月に説明会が始まり、6月から採用面接が始まりますから、普通の学生の就活は数カ月間に及ぶわけです。その間、学生は講義に出ずに就職活動に専念するわけですから、大学教員である筆者にとっては嬉しくありませんが(笑)。
数カ月に及ぶ就活期間、学生は数多くのエントリーシート(履歴書の詳しいものだと思ってください)を書き、数多くの説明会に出席し、面接を受けます。面倒なのは、数多くの企業のことを調べて「志望動機」の欄を埋めることです。各社のパンフレットやホームページを見ることは当然として、必要に応じてOB・OG訪問をしたり大学の就職部で情報を聞いたりするわけです。
不合格通知が昔より多い
こうした苦労自体、大変辛いものですが、さらに辛いのが、不合格通知が多数送られて来ることです。「我が社は貴方のご希望に添えませんでしたが、貴方のご活躍をお祈りしています」といったメールで来ることが多いので、学生たちはこれを「お祈りメール」と呼んでいるようです。
就活の期間が長いということは、学生が多くの企業を受けるということであり、これは企業側から見ると定員に対して多くの応募がある(倍率が高い)ということであり、学生から見ると「数多くのお祈りメールが来る」ということなのです。
学生からは毎年、「10社続けて落ちたので、心が折れそうです」といった悲痛な愚痴を数多く聞かされています。そうなる前に「受かると思って受けるから、落ちた時に落ち込むのだ。宝くじだと思って、50社受ければ1社くらい合格するだろうと思っていれば、10社くらい落ちても落ち込まずに済むから」と予め言っているのですが(笑)。
保護者は一歩下がった伴走者
保護者と学生の関係は、各家庭でそれぞれでしょうから、就活への関与の仕方もそれぞれでしょうが、一般論として言えば、無関心も過干渉もよくないようです。
筆者は、「一歩下がった伴走者」という立場を推奨しています。就活生は不安です。リクルートスーツを着て大人たちと話をするだけでも緊張するのに、受けても受けても受からず、心が折れそうになることも多いでしょう。そうした時に、後ろを振り向けば保護者がいて、笑顔で優しく受け止めてくれる、愚痴を聞いてくれる、慰めてくれる、という安心感が心の支えになるはずです。
アドバイスを求められれば、アドバイスをしてあげましょう。もっとも、自分の価値観や考え方を押し付けたりするのは望ましくないでしょう。「子供の人生は子供の物だから、親が支配してはいけない」といった大上段に振りかぶった正論をぶつつもりはありませんが、昨今の就活の状況をよく知らない保護者の口出しは逆効果になる可能性もありますから、注意してください。
それから、これは筆者自身のことですが、30年後に栄えている会社と沈んでいる会社の見分けがつかないのです。おそらく多くの保護者もそうでしょう。10年前に就活生に「東芝とシャープと東京電力」を勧めた大人も多かったと記憶していますし・・・。
求められればアドバイスを
学生には、保護者に模擬面接をしてもらってアドバイスをもらうようにアドバイスしています。模擬面接をすること自体、学生にとって場慣れしますし、予想もしていなかった質問に戸惑うとすれば、それ自身が練習であり、本番への備えとなるでしょう。
アドバイスも求められればしましょう。もっとも、学生には「複数の大人にアドバイスをもらって、気に入ったものを採用するように」と言ってありますので、保護者のアドバイスが採用されなくても腹を立てないでいただきたいです(笑)。
それから、学生には「自分の長所や短所などについて保護者に聞いてみる」ことも勧めています。なかなか自分の長所や短所は自分では見えないものですから。