3. 年金の繰下げ受給のデメリット
繰下げ受給をするとどのようなデメリットがあるのでしょうか。
利用の前にかならず確認しておきましょう。
3.1 早く亡くなると総額では損をすることもある
繰下げ受給のデメリットの一つは、早く亡くなると損をするということです。
単純計算で、繰下げ受給を開始してから約12年生きていないと損をしてしまうことになります。
結果論にはなってしまいますが、「やっぱり早くからもらっておけば良かった」と後悔することのないよう、知った上で選択することが求められます。
3.2 所得税や社会保険料が引き上がる
年金の受給額が増えると、所得税や社会保険料の負担が増えます。「その分年金が増えるのだから大したことではない」と思うかもしれませんが、額面と手取りは決して比例するわけではありません。
- 税金が非課税から課税になるライン
- 保険料の軽減がなくなるライン
などでは、少し所得が増えるだけで一気に負担が増えることもあります。
実際の受給額が思ったより増えないこともあるので、事前にしっかりシミュレーションすることが必要です。
3.3 加給年金が受け取れない
加給年金とは、厚生年金に20年以上継続加入かつ65歳未満の配偶者または18歳未満の子供がいる場合に受け取ることができる年金です。
加給年金は厚生年金を受け取っていることが支給の要件となっていますので、厚生年金を繰下げした場合、加給年金を受け取ることができません。
年の差夫婦などは十分に注意しましょう。
例えば国民年金のみ繰下げて、厚生年金は繰下げせず受給するなども選択肢のひとつです。
個別の事情によってデメリットは異なるため、年金事務所等で相談してみるのもいいでしょう。
4. 繰下げ受給は長生きに備える選択肢のひとつだが
老後に向けた自助努力が求められる現代において、繰下げ受給は魅力のある制度の一つだといえます。
特に年金見込額が少ない方は、検討しておきたいところです。
しかし、繰下げ受給にはデメリットも存在するからこそ利用率がなかなか伸びない状況にあります。
そもそも繰下げ受給をする場合、受給開始まで「働き続けること」もしくは「それまでの十分な資産を用意すること」もセットで考える必要があるため、ハードルを高く感じるかもしれません。
繰下げ受給を検討する際は、家族とも話し合って慎重に検討するようにしましょう。
参考資料
太田 彩子