日本の現在の年金は、物価上昇をふまえて金額水準が改定される仕組みとなっています。
インフレが進行した場合、同じ金額のままでは購入できるモノの量や質が目減りして、実際の生活が苦しくなる恐れがあることへの対策です。
2024年1月に令和6年(2024年)度の年金額も公表され、前年度対比+2.7%の増額となることがわかりました。
増額改定は話題となりましたが、物価上昇を加味すると「目減り」という見方もあります。くわしく見ていきましょう。
1. 標準的な夫婦の厚生年金額は月額23万円へ
2024年1月19日に、厚生労働省から年金額の改定に関する通知が出されました。
これによると、厚生年金は、平均的な夫婦のケースで月額23万円程度、国民年金はひとり6万8000円となります。
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万7808円(対前年度比+1758 円)です。
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
国民年金がひとり分で月額+1750円、厚生年金は平均的な収入の夫婦で月額+6001円となります。
割合にすると前年比+2.7%増加する形です。
年収でいえば、厚生年金の場合で年間7万円強増えます。
1.1 年金の支払い額が増えるのはいつから?
日本年金機構によると、改定後の年金は6月分から反映される制度となっています。
すなわち、2024年6月に支給される年金から、前年比+2.7%の金額が支給されます。ただし5月分以降の年金が支給停止となる方などについては、5月(4月分)に支給されます。
年金の支払いは、偶数月の15日に前2か月分の金額が支払われる仕組みです。
すなわち6月14日に受け取る年金が2024年度の4-5月分となるので、ここから増額される形です。
2. 年金額が改定される仕組み
2024年現在、日本の年金は物価上昇率などに応じて改定される仕組みです。
具体的な算出方法は厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は前年度から 2.7%の引上げです~」の中で説明されています。
簡単に紹介すると以下の通りです。
- 物価上昇率と賃金上昇率のどちらか低い方の数値をAとする
- 被保険者数の変化率をBとする
- 平均余命を勘案した調整率をCとする
- A-B-Cの率だけ年金額を調整する
なお、BとCを合計して「マクロ経済スライドによる調整額」といいます。
2024年度は次のとおりとなりました。
- A:3.2%
- B:▲0.1%
- C:▲0.3%
- A-B-C:2.7%
ちなみに「マクロ経済スライドによる調整額」は、年金制度を持続的なものにするために存在しています。
平均余命の伸びは、ひとり当たりの支給期間を長くする効果があり、被保険者の減少は年金制度の原資となる現役世代の保険料の減少要因です。
これらの数値の変化に応じて年金額を調整することで、保険料と支給額のバランスを維持しています。