3. 3000万円あれば老後は安泰?

結論から申し上げると、貯蓄が3000万円以上あれば老後が安泰かどうかは、世帯により異なります。というのも、世帯状況や負債の有無・大小、健康状態などがそれぞれ異なるからです。

では、3000万円の貯蓄があっても老後が安泰とはいえないケースについて解説していきます。

3.1 住宅ローンの返済がある場合

60歳代や70歳代でも、住宅ローンの返済を行っている世帯があります。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」によると、住宅ローン残高のある世帯の平均借入額は、60歳代世帯で766万円(中央値225万円)、70歳代世帯で463万円(中央値100万円)です。

また、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2023年度)」によると、60歳代でも新規で住宅ローンを組み住宅購入をする世帯もあります。

老後を快適に暮らすための自宅を購入したい方や、さらに高齢になったときのことを考えてバリアフリーに改修しておきたい方などもいると考えられます。

3.2 介護が必要になる場合

高齢になるほど介護が必要になる可能性が高くなります。生命保険文化センターの調べによると、介護にかかる費用は1ヵ月平均8万3000円で、介護ベッドの購入など一時的な支出に必要な資金は平均74万円です。

また、介護期間は平均5年1ヵ月とされており、平均費用で計算すると約580万3000円かかる計算になります。

ただし、介護期間が10年以上という方も17.6%と高い割合となっているため、これ以上の金額が必要になる可能性もあるでしょう。

さらに、介護を受ける場所によっても費用が異なり、自宅よりも施設で受けた方が高額な費用がかかる傾向があります。また、要介護度が5に近づくほど費用も高額になっていきます。

4. まとめにかえて

50歳代で3000万円以上の貯蓄があるのは、約1割とごくわずかな世帯となっています。3000万円以上の貯蓄があれば、毎月2万円ほどの赤字が生じても補うことが可能です。

しかし、3000万円以上の貯蓄があっても、世帯状況や借入の有無、介護の必要度などによっては十分ではないケースもあります。

もしご自身が今後介護が必要になったり、バリアフリーに改修する必要がでてきたりするときのために、老後資金の準備を続けていくことをおすすめします。

参考資料

木内 菜穂子