2024年1月19日、厚生労働省より2024年度(令和6年度)の年金額の例が発表されました。

国民年金の満額受給は6万8000円となり、2023年度より1750円の増額となる見込みです。モノの値段が上がってきている昨今、うれしいニュースとなりましたね。

また、標準的な夫婦の合計年金額は「46万966円」となるそうです。46万円と聞くと多くもらえていていいなと思われるかもしれませんが、実はそうとも言い切れません。

そこで今回は、年金支給やシニアの厳しい生活事情について確認していきましょう。

1. 2024年度の年金額は「2.7%のプラス改定」だが

厚生労働省が公表した資料によると、2024年度の年金額の例は次のとおりとなります。

  • 国民年金(老齢基礎年金):6万8000円(1人分※1)
  • 厚生年金:23万483円(夫婦2人分※)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万7808円

上記の例において、国民年金は1人分、厚生年金は夫婦2人分を指します。厚生年金の金額において、厚生労働省が示す注意書きに注目してみましょう。

平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

つまり、「40年間会社員として月額43万9000円を稼いだ夫の厚生年金と国民年金」と「40年間専業主婦(もしくは自営業など)だった妻」の夫婦が想定されています。

現役時代の賃金の水準、また物価の状況を見て年金額も調整されているため、毎年改定がある年金額。

2024年度は物価変動率が3.2%、名目手取り賃金変動率が3.1%となりました。しかしマクロ経済スライド※による調整が▲0.4%働き、結果として2.7%の引上げにとどまりました。

※公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの

2年連続で年金自体は増額していますが、物価上昇率ほどには上昇していないため、実は目減りしているのが現状です。

マクロ経済スライドは年金制度の維持に不可欠でありますが、物価の上昇はシニアにとって厳しい社会情勢といえるでしょう。

2. 標準的な夫婦は1回あたりの年金が「46万966円」になる

続いて年金の支給スケジュールも知っておきましょう。

基本的に年金は偶数月の15日(土日祝日の前は直前の営業日)に2ヶ月分が支給されるため、1回あたりの年金額は「23万483円×2=46万966円」となります。

つまり、厚生労働省が「標準的な夫婦」と例に示したモデルケースでいうと、1回の年金支給日に約46万円が支給されるということです。

ただし、この年金額は「夫婦2人分」「2カ月分」である点に注意が必要です。その他の注意点も見ていきます。

3. 標準夫婦の年金「46万966円」の注意点3つ

1回の年金支給日に約46万円が支給される標準夫婦。しかし、シニアのお金事情は厳しいものです。注意点を見ていきましょう。

3.1 年金からは天引きされるお金がある

年金からは税金などが天引きされるため、「46万966円」が丸ごと手取り額になることはありません。

主に以下の4つのお金が天引きされる可能性があることを知っておきましょう。

  • 所得税と復興特別所得税
  • 個人住民税
  • 介護保険料
  • 後期高齢者医療保険料、国民健康保険料(税)

ただし、天引きされる条件はそれぞれで決まっているため、全員にあてはまるわけではありません。例えば所得税や住民税などは、そもそも所得が一定以下であれば非課税となり、天引きされることはありません。

一方、健康保険料や介護保険料はどれだけ所得が低くても支払いの義務があるため、もし天引きとならなくても普通徴収で納める必要があります。

夫婦それぞれの手取り額については、年金振込通知書などで確認しておきましょう。

3.2 夫婦の年金額は個人差がある

厚生労働省が例示する「標準夫婦」ですが、とても限定的なケースであることがわかります。

現役時代の年収や夫婦の働き方、働いた期間などはまさに十人十色でしょう。

つまり、公表されたモデル年金が誰にでもあてはまるわけでない点に注意が必要です。たとえば自営業の夫婦だった場合は、満額の国民年金を受給できたとしても13万6000円。

1度に支給される年金額は27万2000円です。46万円とは大きく印象が異なりますね。

3.3 支給額が変わるのは6月14日支給分から

また、2024年度といっても4月支給分から年金額が変わるわけではありません。

年金は前月までの2ヶ月分が一度に支払われるという性質上、実際に支給されるのは6月からとなります。

すでに物価上昇は続いている中、固定の年金額でやりくりするのは難しいものです。