金融広報中央委員会が2024年2月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」によると、二人以上世帯の平均貯蓄額は前年より16万円アップしたとのことです。

しかし、平均値を引き上げているのはいわゆるアッパーマス層以上の世帯であり、実態を読み取るためのデータとしては不十分です。

今回は、金額別の貯蓄割合、平均値・中央値の推移、保有する金融商品の内訳などから、「二人以上世帯」の貯蓄状況について考察していきます。

1. 最新「二人以上世帯」の貯蓄割合一覧

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」を基に、最新データである2023年の貯蓄状況を見てみましょう。

  • 金融資産非保有:24.7%
  • 100万円未満:8.6%
  • 100~200万円未満:6.8%
  • 200~300万円未満:4.9%
  • 300~400万円未満:4.5%
  • 400~500万円未満:3.2%
  • 500~700万円未満:6.5%
  • 700~1000万円未満:5.7%
  • 1000~1500万円未満:7.9%
  • 1500~2000万円未満:4.4%
  • 2000~3000万円未満:6.2%
  • 3000万円以上:12.7%

平均値:1307万円
中央値:330万円

1.1 貯蓄額の平均値・中央値の推移

2016年から2023年までの時系列データを以下の表にまとめました。


2023年の平均値を見ると、前年に比べてやや増加していることがわかります。しかし、2021年のピーク時に比べると低水準であり、より実態に近い中央値は前年に比べて70万円減少しています。

また、「金融資産非保有世帯」の割合と時系列データを見てみると、2020年以降、3年連続で上昇していることがわかります。

【金融資産非保有世帯の割合】

  • 2020年:16.1%
  • 2021年:22.0%
  • 2022年:23.1%
  • 2023年:24.7%

2020年以降、新型コロナウィルスの感染拡大により、所得が減少した家庭も少なくありません。

また、現在は所得の増加が伴わない「悪いインフレ」と言われており、物価高騰による影響が大きいものと思われます。

平均値を押し上げているのは「3000万円以上」と回答したアッパーマス層以上の世帯であり、中央値や金融資産非保有世帯の割合などを見れば、実態は厳しいということがうかがえます。