年度末が近づくと、定年退職をする方のその後の進路に話題が集まることも増えます。
定年退職し、完全にリタイアされる方もいますが、定年退職後も働く方は実は多いものです。
このとき、働き方によって厚生年金に加入するか、加入せずに働くか選ぶことができます。
1. 厚生年金(国民年金の第2号被保険者)に加入するメリットとデメリット
今まで厚生年金に加入していた方の中には、定年退職後も厚生年金に加入し働く方もいれば、厚生年金に加入せずに働く方もいます。
60歳になっていれば、国民年金に加入する必要はありませんので、公的年金に加入するか否かは、ご自身や家族の状況や、家庭の収支を考えて選択することができます。
公的年金に加入している期間が10年未満の方は、年金の受給資格期間を満たすため、また20歳から60歳になるまでの40年に達していない方は、40年になるまで年金を増やすために、国民年金保険料を支払い、国民年金の任意加入をすることができます。
1.1 厚生年金に加入するメリット
厚生年金に加入すると、老後の年金を増やすことが出来ます(原則70歳まで)。
退職後(在職の場合もあり)の年金を増やすことができるため、老後の安心感が増えます。
また、同時に健康保険料や介護保険料も支払うために、自分で役所の手続きをする手間はありません。
1.2 厚生年金に加入するデメリット
給与から厚生年金保険料を含め、健康保険料や介護保険料が引かれるため、手取り額が減ってしまいます。
ただし、定年退職前と同じく労使折半です。
2. 厚生年金に加入する要件
厚生年金に加入するには要件があります。
就業規則や労働契約などに記載されている一般社員の所定労働時間や所定労働日数の4分の3以上ある従業員で、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトも含みます。
臨時に雇用される場合等を除き、以下の要件をすべて満たす場合、厚生年金を含む社会保険に加入しなければなりません。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 賃金の月額が8万8000円以上であること
- 学生でないこと
雇用契約や労働条件にもよりますが、全て満たさなければ、たとえ同じ職場であったとしても、社会保険に加入しなくても良いと考えれば良いでしょう。
3. 厚生年金に加入すると給与手取り額も変わる
国民年金の受給資格期間を満たしている方は、厚生年金に加入する必要はありませんので、厚生年金に加入しない場合、年金保険料を支払う新たな負担はありません。
厚生年金に加入する場合、定年退職前と同じように総支給額から厚生年金保険料や健康保険料などが控除されるため、手取り額が少なくなります。
(例)東京都在住 Aさん、30万円の給与があった場合
- 協会けんぽ健康保険料 1万7730円 (11.82%を労使折半)
- 厚生年金保険料 2万7450円 (18.30%を労使折半)
- その他、所得税や住民税
厚生年金に加入しない場合、厚生年金保険料を支払う必要はありませんが、健康保険に加入する必要はあります。
その保険料も自分で払う必要があります。
健康保険は
- 今までの健康保険を任意継続する
- 国民健康保険に加入する
- 家族の扶養に入る
の選択肢があります。
「(例)東京都在住 Aさん、30万円の給与があった」の場合、定年退職後は給与が下がっているため、任意継続をすると保険料は今までの倍になっていますし、国民健康保険は前年所得に連動していますので、定年退職前よりも増えているでしょう。
また、この給与の場合、家族の扶養に入れることも考えられないでしょう。