住宅金融支援機構が2024年1月23日に公開した「住宅ローン利用予定者調査」によると、60歳代のうち住宅取得の動機として一番多いのは「老後の安心のため」となっています。

老後生活を迎えるタイミングであっても、持ち家か賃貸に住むべきか悩む人も多いでしょう。

実際に、年金暮らしで賃貸に住むのはデメリットなのでしょうか。

今回は、高齢世帯の家賃相場や賃貸に住む場合のメリットやデメリットについて、解説します。

1. 高齢世帯で賃貸住まいの家賃はいくら?

総務省が2019年9月30日に調査した「住宅・土地統計調査」によると、65歳以上の高齢単身世帯で借家の割合は、33.5%でした。

持ち家の世帯数が422万5000世帯に対して、賃貸などの借家は213万7000世帯となっています。

持ち家と借家の世帯数を比較

出所:総務省「住宅・土地統計調査」

また、借家の1ヵ月あたりの家賃は5万5675円となりました。

前回調査した2013年と比べると、家賃は3%増加しています。

では、家賃の相場と年金額を比較してみましょう。

厚生労働省が2024年1月19日に発表した4月以降の年金月額を見ると、国民年金は満額で1人あたり6万8000円、厚生年金は夫婦の標準モデルで23万483円となりました。

夫婦2人とも国民年金加入者だった場合、家賃を差し引いて残る金額は、以下の通りです。

  • 国民年金(6万8000円×2人)-家賃(5万5675円)=8万325円

厚生年金で標準的なモデル額から家賃を差し引くと、以下の通りになります。

  • 厚生年金(23万483円)-家賃(5万5675円)=17万4808円

それぞれ比較すると、残った金額は約2倍に開きました。

総務省が2023年2月7日に公表した「家計調査」によると、65歳以上の無職世帯では、消費支出が23万8919円となっており、年金から家賃を差し引いた金額より上回っています。

以上から、老後生活で賃貸に住む場合、支出もかさむ可能性が高いので、貯蓄もしっかりと用意しておく必要はあるでしょう。

2. 賃貸住まいのメリットとデメリット

高齢世帯でも、賃貸住まいが必ずしもデメリットというわけではありません。

どのようなメリット、デメリットがあるか解説します。

2.1 賃貸住まいのメリット

賃貸住まいの場合は、住む場所を気軽に変えられることです。

住環境や隣人などで気になることがあれば、すぐに場所を移して引越しができる点がメリットです。

持ち家の場合は、住環境や隣人に問題があっても、気軽に引越しできません。

また、収入の水準にあわせられる点もメリットです。

退職して年金と貯金で生活するようになれば、家賃が安い家に引っ越せば、支出を抑えられます。

2.2 賃貸住まいのデメリット

賃貸住まいのデメリットは、住み続ける間は家賃を払い続ける必要がある点です。

そのため、持ち家で住宅ローンが完済した世帯と比べると、毎月の支出がかさむ点がデメリットです。

また、高齢世帯の場合は健康リスクが高い点や、金銭的に家賃が滞納されるリスクなどを考慮して入居を制限している場合もあります。

現役世代の時に借りていた場合と比べると、借りにくさを感じるかもしれません。

以上から、賃貸に住む場合は、メリットもデメリットもそれぞれあります。