4. 在宅介護の限界点が来たら、家族だけで抱え込まないこと
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」によると、要介護者の介護が必要になった主な原因として最も多かったのが、「認知症(23.6%)」。
また、LIFULL seniorの調査では、介護施設への入居を考えるきっかけとなった状況は「認知症があった」が第1位です。その具体的な症状として「火の不始末」と挙げた人も一定割合います。
在宅介護の限界点を感じたら、家族だけで抱え込むことはせず、介護のプロの手にゆだねることを考えていきましょう。
認知症の症状からくるトラブルには色々なものがありますが、火の元が絡む問題は、ささいな出来事でも絶対に重大視する必要があるでしょう。一歩間違えば隣近所を巻き込む大惨事になるのですから。
4.1 介護費用は「親の資産から」が基本
在宅介護から施設介護への切り替えは、気持ちの面でもお金の面でも大きなインパクトがあるできごとです。
ちなみに内閣府の「令和4年 高齢者の健康に関する調査結果」では65歳以上の実に85.2%が、介護が必要となった場合、介護費用を自分自身の資産から捻出すると回答していますが……。
- 介護費用は投資信託や株式を売却してまかなうつもりだった
- 持ち家を処分して老人ホームの入居費用を作る予定だった
といったプランを立てている場合は、注意が必要でしょう。特に認知症の場合、症状が進行して判断能力が衰えると銀行などの口座が凍結されて引き出せなくなったり、不動産の売買契約ができなくなったりする可能性も。
親の資産は「本人のために」しっかりと有効活用したいもの。必要に応じて任意後見や家族信託などの制度の活用を検討していくことは、「転ばぬ先の杖」として有効であることは間違いないでしょう。
5. まとめにかえて
健康状態や認知面をコントロールすることは難しいですが、「まさかの時」に備えることが大切です。介護費用を上手に捻出できるかどうかは、親と子それぞれの世帯の暮らしに大きな影響を及ぼします。
また、筆者の経験上、比較的元気なうちから、ガスコンロをIHコンロに切り替えたり、スマートフォンなどの便利な電化製品に慣れておいてもらうことも大切です。認知面が低下してから新しい電化製品の使い方を覚えることは難しくなるからです。
そして何より、介護生活で忘れがちなのが「親と自分は同じ速度で歳をとっていくのだ」という事実。育児や仕事、さらには自分の心身の健康管理が難しくなるような事態となれば、そこが家族介護の限界点かもしれません。
※記事中のエピソードはすべて実話ですが、認知症という病気の症状や進行具合は一人一人ちがいます。医療機関を受診し、信頼できる医師の指示のもとで、適切な療養・介護を行ってください。
参考資料
- 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」
- 日本化学工業協会「電子レンジから発火!? ~食品の加熱しすぎに注意~」
- 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」
- 株式会社LIFULL senior「介護施設入居に関する実態調査 2023年度」(PR TIMES)
佐橋 ちひろ