厚生労働省の推計によると、来たる2025年は、高齢者の5人に1人が認知症になる年。親戚や隣近所に「ちょっと気になるお年寄り」はいませんか?
認知症の人のさまざまな問題行動は、介護する家族を疲弊させ、心身の不調、さらには家庭崩壊を引き起こすこともあります。
とはいえ、年老いた親を老人ホームに入所させることに躊躇する人は少なくないでしょう。
費用面での不安はもちろん、「家族がもう少し頑張れば何とかなる」という、希望的観測にも似た根性論で在宅介護を続けるケースも。実は筆者もその一人でしたが……。
今回は認知症の母の在宅介護歴7年目の筆者に、ついに「限界点」が訪れた瞬間をお話ししましょう。
1. 【認知症の在宅介護】家族が頑張ればどうにかなると思っていた
筆者の母(80歳・要介護3)が、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」と診断されたのは7年前。その後、認知面の低下は緩やかに、でも確実に進んでいきました。
認知症の典型的な問題行動である、「物盗られ妄想」「作り話」「暴言」などは一通り経験。近居での通い介護の中で、筆者は多少の問題行動も右から左へ受け流すことができるようになりました。
家族や訪問介護スタッフにあらぬ疑いをかけたり、昼夜問わぬ「鬼電」で親族や知人の安眠妨害をしたり、時には深夜に隣家のベルを鳴らして謎のSOSを求めたり……。
関係者に先回りして事情を説明し、迷惑をかけたときは丁寧にお詫びをしてきた結果、みなさんからの理解をしてもらえたことは幸運だったと思います。
1.1 「姥捨て山になんて、絶対行かない」鬼の形相で叫ぶ母に恐怖
「家族さえ、いや、介護のキーパーソンである娘の私さえ辛抱すれば、どうにかなるだろう」と、根拠のない自信も持っていました。
施設介護に踏み切ることができなかったのは、費用面の不安はもとより、本当の限界点がまだ見えていなかった時期だったからなのでしょう。
また、「老人ホームなんて姥捨て山に連れて行ったら承知しない」と日頃から鬼の形相で叫ぶ母に、ちょっとした恐怖感も覚えていたことも事実です。
「火事さえ出さなければ、あとは何とかなるはず。介護保険の訪問サービスの助けを借りながら最期まで家でみよう」と腹をくくっていた筆者。しかし先日、施設入所を秒速で決断するきっかけとなる事件が起こります。