3. 東京都は「孤独」な人が多いのか

「東京貧困女子。」の大きなテーマには「貧困」に加えて、「孤独」があります。

東京の人口は国内最多であり、渋谷や新宿などでは大人数でワイワイと歩く人たちを何組も見かけ、居酒屋も連日にぎわっています。

しかし、東京都は全国的に見ても人とのつながりが希薄、あるいは全くないという人たちも多くいるのが現状です。

国土交通省の同調査資料では「立会人のいない死亡(人口10万人当たり)」の割合について都道府県別に明らかになっています。

「人口当たりの立会人がおらず死因が特定できない死亡者数」は東京都が9.648%ともっとも高い割合になっています。この数値は大阪府や愛知県、福岡県といった他の大都市圏と比べても高いです。

その背景の1つに、東京都はひとり暮らしの世帯の割合が全国的にもっとも高いことが関係していると考えられます。

総務省統計局「令和2年国勢調査」では親と同居する40歳代独身者の割合が都道府県別に明らかになっていますが、東京都は45位という結果でした。

【図表4】

出所:総務省統計局「令和2年国勢調査」を参考に筆者が作成

東京都は未婚者の親との同居率が低く、単身世帯の多さも孤独死と関係しています。また、地方から東京都に引っ越してきた人の中には親や兄弟、親戚などとなかなか会えない人も多いでしょう。

さらに、コロナ禍において経済的に窮地に追い込まれた女性の中には「実家に帰らない。都心にとどまり続ける」という選択をする人も少なくありませんでした。

仕事がなくなり、経済的に厳しくなれば、実家に帰ることも選択肢の1つのようにも思えますが、そうした選択ができない人も多くいます。

4. まとめにかえて

近年、都心を舞台とした「タワマン文学」がSNSなどで流行しています。また、都内における子どもの受験戦争は激化しています。

さらに、2023年11月にオープンした麻布台ヒルズなどおしゃれで、ラグジュアリーな商業ビルも増えています。

その一方、東京都で経済的に厳しい状況の中で暮らす人たちの状況は見えにくく、最近になってメディアなどで少しずつ取り上げられている傾向にあるといえます。

東京都には子どもに良い教育を与えようと多額の教育費を費やしている人がいる一方、奨学金やバイトをしながら大学に通う学生も多くいます。

さらに、社会人についても東京には大手企業で安定した収入を得ている人がいる一方、厳しい経済状況に置かれている人も少なくありません。

特に、飲食店や商業施設が多い東京では非正規雇用でサービス業に従事する女性も多くいます。

社会が通常どおりにまわっていればとりたてて困ることはなく、一見したところ経済的に困っていないように見えても、実は貧困に陥っているというケースは多々あります。

参考資料

西田 梨紗