「iDeCo(イデコ)」は老後資金準備に特化した制度で、税の優遇を受けられる点が特徴です。

基本的には長期の積み立てであるため、早く始めるほどまとまった老後資金を作れます。

この記事では、35歳と45歳でiDeCoを始めるケースを比較し、積み立てられる年金原資にどの程度の差があるかを試算します。

1. iDeCoを35歳から始めた場合と45歳から始めた場合の資産額と税制優遇額を比較

「iDeCo(イデコ)」は少額の積み立てを長期間続けることで、老後のための資産形成をする仕組みです。さらに加入者が拠出する掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税・住民税の負担軽減につながります。

iDeCoを35歳から始めた場合と、45歳から始めた場合に積み立てられる資産額と軽減できる税額を比較してみましょう。

前提条件は年収500万円の会社員が、毎月2万円の掛金を65歳まで積み立てるケースです。

なお、基礎控除以外の控除はないものとします。

1.1 iDeCoを35歳から始める場合と45歳から始める場合の資産額を比較

iDeCoの積み立てを35歳から始める場合と45歳から始める場合の元利合計額を比較してみましょう。

試算には、金融庁の「資産運用シミュレーション」を用います。

iDeCoで35歳から30年間積み立てた場合の元本は720万円で、45歳から20年間積み立てた場合は480万円です。30年積み立てた場合の元本は、20年積み立てた場合の1.5倍です。

しかし、1%で運用できた場合、30年積み立てた場合の元利合計は、20年積み立てた場合の約1.58倍となります。また、5%で運用できた場合は、2倍以上となります。

これは、iDeCoでは運用益を再投資するため、長期的に積立額以上に元本が増える「複利効果」があるからです。時間の経過とともに元本が増えるため、得られる利益の増加も期待できます。

複利効果は運用期間が長期になるほど大きくなります。そのため、45歳でiDeCoを始めるより、35歳で始めるほうが複利効果で資産を増やしやすくなるのです。

ただし、投資信託で運用する場合、運用益は確定ではなく、値下がりで元本割れするおそれもあります。高い利回りを得ようとリスクの高い運用をすると、値動きの振れ幅が大きくなることを知っておきましょう。

1.2 iDeCoを35歳から始める場合と45歳から始める場合の軽減税額を比較

iDeCoの積み立てを35歳から始める場合と45歳から始める場合の所得税・住民税の軽減税額を比較してみましょう。試算には、国民年金基金連合会のiDeCo公式サイト「かんたん税制優遇シミュレーション」を用います。

iDeCoでの運用成績は想定どおりにならない可能性もありますが、税制優遇の恩恵は所得のある人なら必ず受けられます。

上記の例では1年あたりの投資元本は24万円で、年間4万8000円もの税負担が軽減されることになります。24万円の元本で4万8000円の利益を得る難しさを考えると、非常に大きなメリットであるとわかるでしょう。

税負担の軽減額は、単純に運用期間の長さに比例します。35歳から始める場合と45歳から始める場合では、35歳から始めるほうが軽減額は大きくなります。