ビザ・ワールドワイド・ジャパン(以下、Visa)は2023年12月13日に東京・丸の内の本社でメディアブリーフィングを開催し、同社のシータン・キトニー社長が直近のキャッシュレス市場と同社の実績を振り返るとともに、次の5年に向けたビジョンと戦略を紹介しました。
1. 【キャッシュレス市場の将来像】国内市場の動向
日常生活の中でも普及してきたという肌感覚がある日本国内のキャッシュレス市場は、実際にデータをみるとその急成長ぶりがよく分かります。経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室が2023年4月6日に発表したリリースによると、2022年のキャッシュレス決済比率は36.0%まで拡大。金額では初めて100兆円を突破しました。
キャッシュレスの決済手段として2018年ごろから新たにコード決済が加わったこともありますが、比率でみると圧倒的なのはクレジットカードで、金額ベースで90%以上を占めています。
また、EC市場の拡大もキャッシュレス決済の普及に拍車をかけています。矢野経済研究所が2023年3月に発表した「EC決済サービス市場に関する調査」によると、2018年度に14兆円だった市場規模は2021年度に23兆円まで広がり、さらに2026年度には39兆円に達する見込みです。
同じく矢野経済研究所が発表している「モバイル決済市場規模推移と予測(2020-2025年度予測)」にも興味深い傾向が表れています。モバイル決済は2020年時点では8580億円程度でしたが、2021年には1兆円を突破。このトレンドはさらに加速すると見込まれており、2025年には3兆円を超えると予測されています。
2. 【キャッシュレス市場の将来像】Visaのタッチ決済が急進
世界を代表する決済ブランドである「Visa」も、ここ数年は成長する国内キャッシュレス市場に対応するためにさまざまな取り組みを精力的に行ってきました。特に非接触決済手段である「Visaのタッチ決済」の開発・促進に注力しており、対応するクレジットカードは2023年3月末で1億枚を突破しました。これは直近4年で10倍というハイペースです。
公共交通機関における導入も加速しており、利用できる沿線が増えてきています。プロジェクト数に関しては、アジア太平洋地域で最大規模(28都道府県で55のプロジェクトを展開、2023年12月時点)とのことです。直近では京王電鉄で2024年度内に全駅を対象にタッチ決済対応カード(クレジット、デビット、プリペイド)や同カードが設定されたスマートフォンを用いた乗車サービスの実証実験を開始すると発表しています。
消費者に見えない部分での機能拡張や利便性の向上にも積極的です。クレジット・デビット・ポイント払いの3つを1枚のカードで対応する「フレキシブルペイ」を世界で初めて導入したり、スマホを決済端末にする「Tap to Phone」をアップデートしたりと市場環境の整備にも取り組んでいます。法人向けには法人カードの決済データからCO2排出量を算定するソリューションの提供なども行っています。