3. 【キャッシュレス市場の将来像】日本の決済エコシステムの成長余地は大きい
成長著しい日本のキャッシュレス市場ですが、世界的にみればまだまだ後進との見方がされています。キトニー社長はメディアブリーフィングで「日本が世界に追随するだけではいけない。ユニークな価値を生み出すことで世界がうらやむような環境を作っていきたい」と意気込みました。さらに「ベーシックな部分の改善だけでなく、デジタルアイデンティティや生成AIなどに対応していかなければならない」と今後の方針を述べました。
キトニー社長は決済エコシステムのあるべき将来像として「フリクションレス」「セキュア」「ユビキタス」「相互運用可能」の4つを挙げます。そして、5年後の目標として「日本の決済エコシステムが世界でもっともスマートでパーソナルなものとなり、消費者の日常生活の主役となること」を掲げました。
発展の一方で足かせになっているのが、インフラ面の課題です。トークン導入が不十分であることやデータ品質が最適ではないこと、UXの一貫性がないことなどは進化のスピードを遅らせる要因になっています。これらを解消しつつ、目標を達成するためにVisaは3つの戦略を立てています。
4. 【キャッシュレス市場の将来像】戦略1:市場の成長や機会創出
まずは、グローバル競争力を高めつつ、国内ニーズに対応していくことを方針した「市場の成長や機会創出」です。タッチ決済自体は新しい技術ではありませんが、従来と比べてより高価な買い物で使われるようになってきており、Visaは市場が転換しつつあるとみています。
公共交通機関においても、当初日本はSuicaやPASMOなどの独自インフラがあるので、普及は難しいと考えていましたが、維持・管理コストの負担が大きいことからチャンスがあるということが分かってきました。今後は世界的に標準化されたシステムが広がっていくのではないかと期待を寄せているそうです。
インフラ面の課題に挙がった「トークン導入によるエコシステムの構築」はセキュリティにおける重要なミッションになります。国内におけるクレジットカードの不正利用金額は2022年に437億円となり、前年から大幅に上昇しました。トークン化を進めている諸外国に目を向けると、不正取引金額は減少し、eコマース取引における承認件数は増加しています。より安心した取引のためにトークン導入の重要性はきわめて高いものになっています。
5. 【キャッシュレス市場の将来像】戦略2:人生をより豊かに充実させるよう、寄り添って支援
変化の激しい市場環境において、常に使いやすい支払いの経験を提供するためには、常にテクノロジーをアップデートしていく必要があります。現在、Visaでは決済体験を簡素化する「Real Time Visa Account Updater」やエコシステム内のすべての関係者にメリットをもたらす「Visa Installment Solutions」、加盟店とイシュアの両方に効率的な利用を促進する「Visa Loyalty Solutions」などを強化しています。これによりキャッシュレス決済の基盤をより身軽かつ強固なものにしようとしています。
6. 【キャッシュレス市場の将来像】戦略3:将来性のある事業展開
Visaは自社だけでなくエコシステムの中にいる多くの企業の成長促すことにも重きを置いています。特に安全性は最重要トピックとして、グローバルにおける投資額は過去5年間で約100億ドルに及んでいます。キトニー社長は「潜在的な脅威から守備し、今起きている攻撃を防御し、変化する状況に対応するべく進化し、顧客ごとのニーズに合わせてリスク管理を調整していかなければならない」と一連のプロセスについて説明しました。
顧客へのサポートで鍵を握るのが、Visa Consulting & Managed Services(VCA)です。すでに利用顧客は稼働カードあたりの支出額が3.2倍に伸長、残高積み増しの応答率が12%向上、タッチ決済の支出額が15%上昇、申請利用阻害率が87%低下するなどの成果を挙げており、今後も強化していく方針です。
キトニー社長は「Visaとパートナーの協働活動はシームレスかつ安全な決済エコシステム構築に貢献する」と語り、その結果として「日本は世界で最も革新的な決済システムを持つ国になりうる」とコメント。実現には「パートナーとの密接な協力が必要だ」と強調しました。
参考資料
- ビザ・ワールドワイド・ジャパン
- 「Visaのタッチ決済」
- ビザ・ワールドワイド・ジャパンリリース「1億枚達成!拡がるVisaのタッチ決済」
- 経済産業省リリース「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
大蔵 大輔