4. 【親が認知症になる前にやっておくべきこと その3】お金のことを再確認

「父の年金額も資産も把握していたつもりでした。また投資用のマンションを1室、賃貸に出して不労所得があることも知っています。

私たちきょうだいは、認知症が進むと金融機関の口座が凍結されたり、不動産の売買ができなくなったりする可能性があることを最近知りました」

と佳子さんは話してくれました。

「父からは、『もし介護が必要になったら証券口座にある投資信託の解約と、投資用のマンションの売却を頼む。老人ホームの費用は十分まかなえるはずだ』と聞いていたので資金面は安心してきたのに……。家族が売買を行うことができくなると困ります。急いで家族信託を検討しましたが、認知症になってしまってからでは締結できないのですね。自分たちの知識不足を悔いるばかりです」

と佳子さんは困惑しながら話します。

4.1 認知症で「資産が凍結される」リスク

金融機関に認知症であることを知られると、判断能力が十分ではないとみなされ「口座が凍結される」可能性があります。口座が凍結されると、本人や家族であっても資金を動かすことができなくなるのです(※)。

「家族信託」と「成年後見制度」は、その解決策として挙げられます。

※ただし、金融機関によっては、入院や介護施設費用との請求書など「資金が必要な理由が分かる書類」などを提示することで、相談に応じてくれる場合もあるようです。(参考:一般社団法人全国銀行協会「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引き出しに関するご案内資料」

家族信託と成年後見制度

このうち家族信託は高額なコストが不要で比較的気軽に利用できる制度ですが、認知症になる前に信託契約を結ぶ必要があり行う必要があります。よって佳子さん父のケースでは対象外。

一方、成年後見制度の利用には家庭裁判所への申し立てが必要となり、時間とコストがかかります。

実は筆者自身、認知症の実母の資産を管理していくうえで成年後見人制度の利用を検討中の一人。しかし、この制度はまだ我が家にとって気軽に利用を決断できるものではないと感じています。

後見人には親族以外の人が選ばれる可能性が高いこと、さらに「本人が判断能力を回復して裁判所取り消し審判を受けない限り、本人が亡くなるまで成年後見人制度をやめることができない点など、ハードルの高さを感じている人は筆者だけではないでしょう。