投資の鉄則といえば、「安いときに買って、高いときに売る」。考え方自体はいたってシンプルなものです。

 しかし中には、うまく運用しようとして「高いときに買って、安いときに売る」という逆のことをやってしまう人がいます。持っていた銘柄が高値で売れた後に「やっとひと息ついたな」と思っても、これまでの損益を合計してみると、実は思っていたより儲かっていなかったり、むしろ損をしてしまっていたりすることもあります。恐ろしいのが、こうした状況に「気づかぬうちに」陥ってしまうことです。

 なぜ、こうした「逆鉄則」を踏んでしまうのか、特にどんな人がそのような状況に陥りやすいのか、そしてどうすれば回避できるのかを、書籍『投資信託でうまくいく人、いかない人』の著者・白石定之さんが解説します。

失敗の典型パターン

 具体的に、どのようにして「失敗パターン」に陥ってしまうのか。株式を例に、投資家の心理を、株価を追いながら見てみましょう。

1.株価1000円で買付
「この銘柄は上がりそうだ」
株が上がることを期待。

2.1200円に上昇
「やっぱりオレの目は正しい」
すぐに上昇したので、気分は高揚。自分は腕がいいかもと思っている。

3.1100円に下落
「1200円で売っておけばよかった。また1100円まで戻ったら売ろう」
ほんの少しだけ悔しさはあるが、まだ余裕がある。

4.1200円に上昇 → 売却(+200円)
「1200円になったから売却だ。やっぱりオレは株の天才だな。もう1回1000円に下がったら買い直そう」
利益を挙げて嬉しい状態。「株は簡単だ」と思っている。自信があり、やる気も十分。

高揚感の後に……

5.1400円に上昇 → 買付
「1200円で売るんじゃなかった! この銘柄はまだまだ上がりそうだから、買い直しだ!」
きちんと利益は出ていたのに、「早く売却してしまったこと」を損したように思って後悔。注目した銘柄が上がっていく状況に我慢できずに乗ってしまう。

6.1500円に上昇
「やっぱりオレの注目した銘柄はすごい!」
またすぐに上昇したことに気分は最高潮。

7.1400円に下落
「1500円で売っておけばよかった。もう一度1500円になったら売ろう」
高揚感が少し薄れてきている。

8.さらに1300円に下落
「1500円で売ろうと思っていたのに! 1400円まで戻ったら売却しよう」
売り場を逃したことを後悔している。

9.1380円まで戻すも再び1300円に
「なんで戻らないんだ!」
とても悔しい状態。絶対にマイナスにはしたくないと思っている。

10.1000円に大きく下落 → 売却(-400円)
「もうダメだ。もっと下がったら損が大きくなってしまうから売却だ。いったん仕切り直しだ」
血の気が引き、青ざめている。さらに下がるかもしれないという怖れがある。

11.900円に下落
「売っておいてよかった。まだ下がりそうだから、下がったところで買い直そう」
売却後にさらに株価が下がり、内心ほっとしている。

 この時点で累積では200円のマイナスとなりましたが、さて、このあと「仕切り直し」はうまくいくのでしょうか?