本当に老後は「貯蓄2000万円」が必要なのか
前章では、老後資金として年金以外に2000万円が必要な理由について解説しましたが、世帯によって生活スタイルは異なるため、一概に「全ての世帯で2000万円の貯蓄が必要」というわけではありません。
ご自身のライフスタイルに応じた老後資金を知るためには、下記のシミュレーションをしておくことが大切になります。
- 何歳まで働くのか
- 自分が将来受け取れる年金月額はいくらか
- 老後生活に必要な最低生活費はいくらか
現代では、働くシニア世代が増加傾向にあり、年金受給を繰下げて働いたり、年金を受け取りながら働いたりする人も多いです。
実際に、総務省「統計からみた我が国の高齢者」の調査では、65〜69歳の50.8%、70〜74歳の33.5%が働いており、「働くシニア」の割合はいずれも過去最高となっています。
「生活費を補填する手段=貯蓄から切り崩す」という選択以外にも、働けるうちは働いて収入源を確保することで、貯蓄2000万円以下でも老後に生活していくことも可能です。
とはいえ、年齢を考慮すると、病気やケガなどで突如働けなくなる可能性もあるため、やはりある程度の貯蓄は必要になってくるでしょう。
しかし漠然と「2000万円を貯めるべき」とは考えず、「自分がいくら年金を受給できるか」を明確にしたうえで、年金受給額から老後生活に必要な最低生活費を差し引いて、必要な老後資金を算出してみることが重要です。
「差し引いた金額(赤字分)×12ヶ月×推定の老後生活の年数」が、あなたの老後に必要な資金となるため一度シミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。
「自分の受け取れる年金額がわからない」という方は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できるため、調べてみることをおすすめします。
自分の老後生活に合った分を計画的に貯蓄しておこう
本記事では、貯蓄「2000万円以上」持っている60歳代の割合について、夫婦世帯・単身世帯それぞれの視点から解説していきました。
夫婦世帯・単身世帯ともに、貯蓄「2000万円以上」を達成している割合は3割以下となっており、貯蓄ゼロの割合も多いことから、「貯蓄ができている人とできていない人」の二極化傾向にある実態がわかりました。
「老後2000万円問題」は、特定のモデルによって試算された金額であり、ライフスタイルによって不足金額は異なるため、必ずしも老後に2000万円が必要というわけではありません。
とはいえ、少子高齢化により年金が今より減少したり、さらに物価高が続いたりする可能性は十分に考えられるため、ある程度貯蓄をしておくことは老後の安心材料になり得るでしょう。
本記事を参考に、まずは「自分の老後生活に合った貯蓄額」を算出し、計画的な貯蓄準備の検討をしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 金融審議会「市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」
- 厚生労働省「提出資料 高齢夫婦無職世帯の収入・支出」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)」
- 総務省「統計からみた我が国の高齢者」
- 帝国データバンク『「上場外食主要100社」価格改定動向調査』
太田 彩子