30年の日本の平均年収の推移で浮き彫りになる日本の課題

日本は過去30年間でほとんど平均年収が変わっておらず、これは世界的に見ても異例の事態といえます。

30年の日本の平均年収の推移から浮き彫りとなった課題として、「賃金を上げなくても労働者がいる」ことが挙げられます。

平均年収を上げようとした場合、労働需要に対して労働人材が不足すれば、必然的に賃金が上昇し、年収アップにもつながります。

しかし、近年の日本産業においては、パートやアルバイトといった「非正規労働者」が増加傾向にあることから、正規労働者の賃金が上昇して無理に人材を確保しなくても、経済が成り立ってしまう現状があるのです。

非正規労働者が増加している背景として、公的年金受給開始年齢の引き上げや、育児と仕事の両立の推進が進められていることが挙げられます。

上記の制度の改正から、介護や育児を担う方が働ける機会が増えたものの、フルタイムで働くことは難しいことから、非正規労働という形で働くケースが多いのです。

このような背景から、日本では賃金水準の低い「非正規労働者が増加傾向」にあり、結果として労働人材の確保が十分であることから、賃金水準が停滞し、年収の上昇につながりにくくなっていることも一因だと考えられます。

給与は変わらず生活が苦しくなっている背景

日本の平均年収の推移から浮き彫りとなったもう1つの課題として、過去30年間賃金が変わっていないのにもかかわらず、出ていくお金は増えていっていることも挙げられます。

日本では、近年物価高が続いているだけでなく、消費税や社会保険料の負担も増加していることから、30年前よりも生活にゆとりのない世帯が増えている現状があります。

実際に、株式会社帝国データバンクの調査によると、2023年の値上げ品目数は累計3万1887品目になるとされており、類を見ない記録的な値上げラッシュが続いています。

また、消費税においては過去30年間で3.3倍に、保険料に関しても「全国健康保険協会」では過去30年間で1.8ポイントほど健康保険料率が上昇しています。

このように、平均年収が変わらないだけでなく、物価高や消費税及び保険料の増額がこの30年間でされていることから、「給与は変わっていないのに生活が苦しい」と感じる人が多くなっているのです。

もちろん、週休2日制が導入されて働き方改革が進むなど、労働環境の改善を実感する方もいるでしょう。

環境は向上しつつ、経済的には苦しくなる状況が続いているのが実情なのかもしれません。