厚生労働省の「簡易生命表(令和4年)」によると、日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性は87.09歳となっています。
しかし、老後資金がいくら必要か計算するには、平均寿命ではなく平均余命で考える必要があります。
平均余命とは、ある年齢の人が、そのあと何年間生きることができるかという期待値を算出したものです。
現在60歳の方の平均余命は、男性は約24年、女性は約29年です。男性で60歳+24年=84歳、女性で60歳+29年=89歳と、平均寿命より備えるべき期間が長いことがわかります。
また、90歳まで生きる確率は男性で4人に1人、女性では2人に1人以上となっていますので、今後の医療の進歩等を考慮すれば、まさに「人生100年時代」が訪れています。
そんな中、老後どのぐらいの資金を準備すれば良いのか気になっている方は多いのではないでしょうか。
今回は老後を迎える60歳代世帯にフォーカスをして、貯蓄額や年金事情を覗いていきたいと思います。
1. 60歳代「貯蓄額2000万円」を超える世帯は何パーセント?中央値は700万円
それではさっそく、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」をもとに、60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額を確認してみましょう。
1.1 【60歳代】二人以上世帯の金融資産保有額:中央値700万円
※金融資産を保有していない世帯を含む
- 平均値:1819万円
- 中央値:700万円
60歳代・二人以上世帯の貯蓄額は、平均1819万円と中央値700万円と大きく乖離しています。
平均は一部の大きな数値に引き上げられていると考えられますので、より実態に近いと考えられる中央値を参考にしておきましょう。
しかし、円グラフを見ると貯蓄ゼロの世帯も多いようです。お金事情ですので世帯差はあって当然でしょう。
実情を深掘りするために、貯蓄額(=金融資産保有額)ごと割合を見ていきます。
1.2 【60歳代】二人以上世帯の貯蓄額ごとの割合
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:6.1%
- 100~200万円未満:5.5%
- 200~300万円未満:3.3%
- 300~400万円未満:3.2%
- 400~500万円未満:3.4%
- 500~700万円未満:5.3%
- 700~1000万円未満:6.1%
- 1000~1500万円未満:8.6%
- 1500~2000万円未満:5.7%
- 2000~3000万円未満:8.8%
- 3000万円以上:20.3%
- 無回答:2.9%
上記を見ると「貯蓄ゼロ」が約2割である一方で、「貯蓄3000万円以上」も約2割と二極化していることが分かりました。
近年は定年年齢の引き上げや定年制の廃止などが進みつつあるため、これから退職金を受け取るという世帯もあるでしょう。
一方で退職金で住宅ローンを完済して貯蓄ゼロ、そもそも現役時代に貯蓄まで手が回らなかったという世帯もあると考えられます。
次に、一般的に老後生活における「柱」の一つとなる公的年金(老齢年金)の受給額を見ていきます。