「国民年金の満額よりも、生活保護の受給額の方が多い」と聞いたことはありませんか?

国民年金の場合、20歳~60歳まで保険料を40年間支払った人の満額は79万5000円(2023年・新規裁定者)。

月額は6万6250円ほどです。

また、老齢厚生年金は、現役時代の平均標準報酬月額と厚生年金月数(勤務月数)がもとになるため個々に年金額が異なります。

参考として、「2021(令和3)年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、男女合わせた月額平均は14万3965円です。

生活保護は、生活に困窮する方が「健康で文化的な最低限度の生活保障」と「自立の助長」を目的とした制度ですが、実際、国民年金と比べると、どのくらい受給額に違いがあるのでしょうか。

今回は、生活保護の仕組みと受給額を確認しながら、考えてみましょう。

1. 生活保護の仕組みと対象になる人を確認

生活保護制度は、生活に困窮する人の困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するものです。ゆくゆくは自立を助長することが目的です。

生活保護は世帯単位で行われ、持っている資産、能力等あらゆるものを活用しても、収入が生活保護の基準以下という場合に、生活保護(足らない分の補填)を受けることになります。

生活保護を受ける方は、以下のような状態の方が対象となります。

  • 不動産、自動車、預貯金等のうち、ただちに活用できる資産がない。
  • 就労できない、又は就労していても必要な生活費を得られない。
  • 年金、手当等の社会保障給付の活用をしても必要な生活費を得られない。

2. 生活保護ってどれくらいもらえるの?2023年10月から改定へ

生活保護の支給額は、地域、世帯人数、年齢などを考慮して決められます。

たとえば、住んでいる場所が都市部か地方かで物価の基準が違います。

また、世帯人数が多ければ、必要な生活費も多くなるはずとなり、個々の状況に応じて決められます。

実際に支給される扶助の内容は、以下の8項目に分けられています。

  • 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)
  • 住宅扶助:アパート等の家賃
  • 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
  • 医療扶助:医療サービスの費用
  • 介護扶助:介護サービスの費用
  • 出産扶助:出産費用
  • 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
  • 葬祭扶助:葬祭費用

このうち生活扶助の基準額は、2023年10月から「世帯人員一人当たり月額1000円」加算されます。

ただし、当該加算を行ってもなお現行基準額から減額となる世帯については、現行の基準額のまま据え置かれます。

参考として、8項目のうちの1つである「生活扶助基準(食費・被服費・光熱水費等に対応するもの)」(令和5年4月1日現在)を以下に紹介します。

2.1 高齢者単身世帯(68歳)の金額

  • 東京都区部等:7万7980円
  • 地方郡部等:6万6300円

2.2 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)の金額

  • 東京都区部等:12万1480円
  • 地方郡部等:10万6350円

冒頭で、国民年金の満額が月額は6万6250円ほど、厚生年金の平均月額が14万3965円とお伝えしました。

生活保護から支給される生活扶助基準(単身世帯)と国民年金の満額を比べると、東京都区部等が約1万円多く、地方郡部はほぼ同じといえます。

しかし、厚生年金の平均月額と生活扶助基準(単身世帯)を比べると、厚生年金の支給の方が多くなります。

3. 生活保護の手続きの流れ

生活保護の手続きを希望する場合は、以下の手順で行います。

3.1 事前の相談

生活保護制度の相談窓口は、お住まいの地域を所管する福祉事務所です。

生活保護担当者による説明があります。

生活保護の受給以外にも、生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用など、幅広く相談に乗ってもらえます。

3.2 保護の申請

生活保護を申請することになったら、保護の決定のために以下の調査が実施されます。

  • 生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
  • 預貯金、保険、不動産等の資産調査
  • 扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
  • 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
  • 就労の可能性の調査

3.3 保護費の支給

厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から収入(年金や就労収入等)を引いた額が保護費として毎月支給されます。

  • 生活保護を受けている間は、毎月、収入の状況の報告が必要です。
  • 福祉事務所のケースワーカーによる世帯の実態調査が年数回あります。
  • 就労の可能性のある方については、就労に向けた助言や指導を行います。

生活保護は、要件を満たす限り誰でも受けることができます。

しかしその財源は税金が使われているため、収入の報告や生活状況の調査を受けること、就労に向けた助言指導を受けるなど、さまざまな義務も発生することも知っておきましょう。

4. 年金と生活保護を知っておく

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Kae B Yuki/shutterstock.com

Kae B Yuki/shutterstock.com

生活保護は、働きたくても病気などの理由で働けなかったり、頼る人がいない人をサポートしたりするためのセーフティーネットです。

万が一、そのような事態になったときの頼れる場として、知っておくようにしましょう。

参考資料

舟本 美子