年収の壁を超えた場合の損益分岐点は?

野村総研の調査結果では、妻の年収が106万円を超えた場合、世帯の手取り額を元の水準に戻すために、妻の年収を138万円まで増やす必要があると発表しました。

仮に、106万円未満で就労調整している人が、残りの差額32万円を得ようとすると、労働時間が物理的に確保できない可能性があります。

全国平均の最低賃金1004円で働く場合なら、約320時間の労働時間を確保する必要があります。

都市部は賃金の水準が高いため、差額の32万円が仮に得られたとしても、物価高による支出の増加や、子育てとの両立ができない可能性もあるでしょう。

一方、地方では時給の定め方が都市部より低くなる傾向があるため、労働時間を確保しても138万円の収入が得られない可能性があります。

また、都市部と同様で、仮に時間を確保できても子育てと両立させるのは難しいかもしれません。

つまり、収入の損益分岐点を考えたとしても、このままの生活状況が続く場合であれば、年収の壁を打破できないといえるでしょう。

政府の支援策は成功するか注目

政府は今後3年間で集中的に取り組む少子化対策に「年収の壁への対応」を打ち出しています。

収入の壁を超えても社会保険料の負担を一時的に企業が負担できるように、助成金を給付する見通しです。

とはいえ、この支援策も継続しては行われません。今後、抜本的に社会保険料や税制上の壁を打破する手立てを考えないと、問題は先送りされるだけになります。

どのようなプランをもって年収の壁を解消させていくか、今後も注目していきましょう。

参考資料

川辺 拓也