iDeCoと退職金を同時に受け取る場合
iDeCoと勤務先の退職金を受け取る場合の影響も見てみましょう。
ここでは勤続30年、退職金の額面2000万円の人が、同時にiDeCo(加入年数30年)の資産1000万円を受け取るケースの所得税、住民税を試算します。
このケースでは勤務先の勤続期間とiDeCoの加入期間がすべて重複していたものとします。
【現行】
退職所得は、勤務先からの退職金とiDeCoの一時金を合計した金額(3000万円)から求めます。
退職所得控除額:800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円
退職所得:(3000万円-1500万円)×1/2=750万円
課税退職所得金額750万円にかかる所得税率は23%(控除額63万6000円)です。
所得税:750万円×23%-63万6000円=108万9000円
住民税:750万円×10%=75万円
合計:108万9000円+75万円=183万9000円
【退職所得控除が勤続1年あたり一律40万円となった場合】
退職所得控除額:40万円×30年=1200万円
退職所得:(3000万円-1200万円)×1/2=900万円
課税退職所得金額900万円にかかる所得税率は33%(控除額153万6000円)です。
所得税:900万円×33%-153万6000円=143万4000円
住民税:900万円×10%=90万円
合計:143万4000円+90万円=233万4000円
この例では退職所得控除が勤続1年あたり一律40万円となった場合、現行に比べて49万5000円の増税となります。
iDeCoの有利な受け取り方を考えましょう
退職所得課税の見直しはiDeCoにも影響があり、iDeCoの資産額が多い人ほど不利になると考えられます。
積み立てた資産の手取りを多くするには、勤務先からの退職金や公的年金などとiDeCoをどのように組み合わせるか考える必要があります。
自分にとって最も有利になる受け取り方を見つけましょう。
また、新NISA開始まで約3カ月となり、さまざまな資産形成を考えるかたもいると思います。
これを機にiDeCoや新NISAなど、自分にあった老後の資産運用を検討されるといいでしょう。
参考資料
- 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2023」
- 国税庁「退職金と税」
- 国税庁「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」
- 国税庁「No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)(令和4年1月1日以後)」
- 内閣官房「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2023改訂版案」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
松田 聡子