強烈なキャラクターのオンパレード「月下の棋士」
数ある将棋マンガの中でも強烈なインパクトを残したのが「月下の棋士」です。1993年に連載がスタートした当時、今年(2023年)日本将棋連盟会長の職に就いた羽生善治九段が快進撃を続けていました。
その2年後には1995年度の七冠制覇挑戦(当時のタイトルは7つ)、翌1997年度に七冠達成と将棋ブーム到来と重なるように2001年まで連載した作品です。
伝説のプロ棋士の孫息子が特例で奨励会に編入するという設定は、現実の制度とは大きくかけ離れていますが、監修は将棋ファンから老師と呼ばれ慕われて、著述家としても活躍していた故河口俊彦八段が担当。
タイトル挑戦までの道のり、対局の描写は現実のプロ将棋界に沿った内容になっています。
登場人物は強烈過ぎるほど個性豊かです。昭和の大棋士をモチーフにしたキャラクターも登場し、昭和から平成初期の将棋界の雰囲気や「あの棋士のモデルは誰?」と考えるのも楽しいです。
昭和の将棋界が分かる「5五の龍」
現在の奨励会を含むプロ将棋界の形は大正から昭和初期に原形ができ、1947年に現在に続く日本将棋連盟が誕生しました。
平成そして令和となり昭和は遠い時代のようになってしまいましたが、観る将や親将にとって将棋の歴史を知ることは知識を増やすことにつながります。
そんな昭和の将棋界を現在に伝えてくれるのが「5五の龍」です。
作者は「うしろの百太郎」「恐怖新聞」といったオカルトマンガの大家として知られるつのだじろう氏は将棋愛好家の顔を持ち、1978年から1980年代に週刊少年キングで連載。当時小学生だった羽生九段が愛読したという逸話もある作品です。
プロ棋士が主人公ではなく、プロ棋士を目指す中学生であり、奨励会入会への道や奨励会の過酷さや現実よりも一足早く女性初の奨励会員誕生を描くなど異色の将棋マンガともいえます。
主人公の父親が今ではすっかり姿を消した真剣師という時代を感じる設定や、羽生世代が将棋界に入る前の昭和の将棋界の雰囲気を堪能することができます。