老後の借家住まいは、長生きしている間にインフレが来るリスクがあるので、自宅が安心です。(経済評論家 塚崎公義)。

借家と持ち家の論争は、損得の観点が多い

借家と持ち家を比較して、どちらに住むのが得か、という論争。

諸経費を考えると「一長一短」ということになりそうですね。ならば別の観点から考えてみましょう。

それは「悲惨な老後を避ける」という観点です。

借家住まいをしていると、長生きしている間にインフレが来た場合、高騰した家賃を長期間支払い続ける必要が出て、老後資金が底を突いてしまう可能性があるのです。

長寿自体は喜ばしいことですが、老後資金の面ではリスクをはらんでいると言えるでしょう。

少し前までは「30年もインフレが来ていないのだから、今後も来ないだろう」と考える人も多かったようです。

しかし、ウクライナ戦争に端を発する世界的なインフレの影響が看過できない昨今。これから先もインフレが起こるリスクがあると認識する人は増えているでしょう。

戦争のリスクに加えて、少子高齢化で労働力不足となって賃金が上がってインフレになるリスク、大規模な自然災害が起こり復興資材の輸入が激増し、ドル高になって輸入物価が高騰するリスクなど、さまざまな事態が想定できます。

備えあれば憂いなしですね。

【借家 vs 持ち家】老後の借家暮らしはリスクが大

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そもそも老後資金の最大のリスクの一つは、長生きしている間にインフレが起こり生活費がかさみ、老後資金が枯渇することでしょう。

それに加えて高騰した家賃を長期間支払い続ける「ダブルパンチ」を食らうのは避けたいところです。

もう一つ、意識しておきたいリスクもあります。

「単身の高齢者に家を貸したがらない不動産オーナーが、一定数存在するであろう」ということです。

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出所:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協総合研究所第26回 賃貸住宅市場景況感調査 2021年4月~2022年3月」(2022年11月)より一部抜粋



日本賃貸住宅管理協会の調査結果(※)においても、高齢者の入居受け入れに対して「拒否感がある」と答えた賃貸オーナーの割合は23.7%(全国)。そして、この割合は首都圏以外のエリアでは実に50%を超えています。

何らかの事情で引っ越しが必要になった時、借りる家が見つからないリスクは深刻かも知れません。

確かにオーナー目線で考えれば、若い人に貸す場合と比べて単身の高齢者に家を貸すのはリスクが大きそうなので、避けたい気持ちはわかりますが、高齢者にとっては困ったことですね。

※公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協総合研究所第26回 賃貸住宅市場景況感調査 2021年4月~2022年3月」(2022年11月)

【借家 vs 持ち家】持ち家のリスクは限定的

持ち家に住んでいれば、長生きしている間にインフレがきても、「家賃の高騰」で戸惑うことはありません。

ただし、インフレではなくデフレと人口減少で家の資産価値が下がっていくリスクはあります。

終の棲家となることが確実であれば、値段が多少下がっても問題ないかもしれません。しかし、自宅を売却して老人ホームへの入居資金に充てようと考えている世帯にとっては、看過できないでしょう。

郊外の広い家に住んでいるのであれば、都心のマンションに居を移す、といった視点もリスクヘッジの一つとして有効となりそうですね。

【借家 vs 持ち家】自宅取得時の「強制貯蓄」にもメリット

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若い時点で住宅ローンを借りて自宅を購入することには、上記とは別の大きなメリットもあります。

それは、「人間の意志の弱さを補ってくれる」ということです。

現役時代に賃貸物件に住み、定年後に自宅を買う場合、通常の老後資金に加えて住宅購入資金を貯めておかなくてはなりません。

家賃を払いながら多額の貯金をするには、相当強い意志の力が必要でしょう。

一方、多くの人は意思が弱いので、つい贅沢をして住宅購入資金が貯まらない、というリスクを抱えることになりそうです。

ダイエットや禁煙に失敗している人、夏休みの宿題を泣きながら仕上げた覚えがある人は、要注意かもしれませんね。

その点、銀行は毎月しっかり返済資金を引き落としてくれますから、借り手は残った預金残高の範囲内でしか贅沢ができません。

意志の弱い人は、銀行の親心を利用しましょう(笑)。

貸家はリスクを覚悟で。不動産投資は簡単ではない

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「マイホームは持つべき」というのが筆者の考えです。

しかし、同じ不動産でも賃貸物件をオーナーとして所有する場合は、リスクをはらむ点を承知しておく必要があるでしょう。

家賃収入は確かに魅力的ですが、借り手が見つからず空き家(空室)となる可能性も。また、周辺の空き家が増えて、家賃相場が低下していくリスクも想定しておく必要がありますね。

人口減少時代のいま、よほどの好条件の物件でない限り、「確実に」家賃収入を見込むことは難しいでしょう。

入居者が入れ替わるたびに壁紙を張り替えたりするコストや、住民のトラブルなどへの対応が発生することも心得ておく必要がありますね。

自分の資産総額に占める不動産の比率が高くなりすぎること自体もリスクです。資産は不動産と預金と株式等に分散しておくことがリスク管理を考えると望ましいでしょうから。

実際に貸家を持つ代わりに、REIT(リート:不動産投資信託)という投資商品を検討してみるのも一案かもしれません。

プロが大勢の投資家から資金を集めて賃貸不動産を購入するものです。

不動産賃貸は簡単ではありませんから、初心者が自分でやらずにプロに任せよう、という発想ですね。

本稿は、以上です。

参考資料