4. 厚生年金と国民年金から「天引きされない人」もいる?

厚生年金と国民年金から「税金」や「社会保険料」が、平均で1万円から3万円ほど天引きされることがわかりました。

しかし、これらが天引きされるにはそれぞれ条件があり、それら条件を満たしていない場合は、年金から天引きされないケースもあります。

最後に、各項目ごとに厚生年金と国民年金から「天引きされない人」について紹介していきます。

4.1「介護保険料額」が天引きされない人

介護保険料額は、以下に該当する場合は年金から天引きされず、普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年額が18万円未満の場合
  • 年度途中で別の地域に転入した人
  • 年度途中で保険料が減額・増額になった人
  • 年金の受給開始年度の場合

その他にも、年金現況届の提出を忘れた場合は、年金が一時差し止めになると共に天引きが止められるケースがあるので注意しましょう。

4.2「後期高齢者医療保険料・国民健康保険料(税)」が天引きされない人

後期高齢者医療保険料は、以下に該当する場合は年金から天引きされず、普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満の場合
  • 介護保険料と後期高齢者医療保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている場合
  • 介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない場合
  • 年度の途中で加入した(75歳となった)人
  • 年度の途中で保険料が減額となった人

一方で国民健康保険料(税)の場合は、以下に該当すると年金から天引きされず、普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満の場合
  • 国民健康保険料(税)と介護保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている場合
  • 世帯主の介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない場合
  • 世帯主が国民健康保険に加入していない人
  • 世帯の国保加入者に65歳未満の人がいる人

上記に記載された「年金額2分の1」の判定は、各市区町村が特別徴収の要否の審査を行う際に行っています。

留意点として、世帯主が会社の健康保険や後期高齢者医療制度などの医療保険に加入して、他の家族が国民健康保険に加入しているケースの場合は「擬制世帯」となります。

この世帯の世帯主は「擬制世帯主」となり、世帯を代表して各種届出や保険料納付の義務を負うため、保険証や納入通知書は擬制世帯主あてに送られることも覚えておきましょう。

4.3「所得税額および復興特別所得税額」が天引きされない人

所得税および復興特別所得税は、年金所得が一定額に満たない場合、そもそも課税されないので天引きされません。

具体的には、65歳未満で108万円、65歳以上で158万円以上の年金受け取りの場合が課税の目安となります。

4.4「個人住民税」が天引きされない人

個人住民税も所得税や復興特別所得税額などと同様に、非課税の場合は天引きされません。

そのほかにも、下記に該当する場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。

  • 老齢基礎年金等の年額が18万円未満の場合
  • 介護保険の特別徴収対象被保険者でない場合
  • 当該年度の特別徴収税額が老齢基礎年金等の年額を超える場合
  • 老齢基礎年金等から所得税、介護保険料、国民健康保険及び後期高齢者医療制度の保険料を控除した後の額が特別徴収税額より小さい場合

非課税となる所得目安は、自治体によって異なるため、気になる方はお住まいの自治体窓口で確認してみると良いでしょう。

5. 受け取れる「手取り額」を想定して老後の準備をしておこう

本記事では、支給される年金から税金や社会保険料が「天引きされる人」と「天引きされない人」の違いについて解説していきました。

老後の主な収入源は年金となりますが、その年金からも現役時代と同様に天引きされるお金が存在します。

中には天引きされないケースもありますが、その条件の多くが「所得が低い」「実際にはお金を納付する必要がある」といったケースとなるため、いずれにせよ老後の資金準備は必要であるとうかがえます。

老後資金に備えて、まずは自分の受け取れる年金の目安金額を確認し、将来の老後に向けて今のうちから準備をしておきましょう。

参考資料

太田 彩子