皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
全国的に寒気が流れ込み、寒さが本格化するとの天気予報があるようです。今現在、風邪をひいている私が言うのもなんですが、ぜひ非就寝時は暖かくしてお休みください。
日経平均株価は、約2カ月前の9月15日時点で19,909円(銭以下を切り捨て、以下同じ)でしたが、11月7日時点では22,937円となり、上昇率は約15%に達しました。
約2カ月間で15%という上昇率は、(捕らぬ狸の皮算用として単純に計算した場合)「1年で90%(=15*6)」という容易には想定できない大きな上昇率であると考えます。
これまでのコラムでは、2017年9月21日公開の『日経平均株価20,000円を回復! これは持続するのか?』に代表されるように、「(緩慢ではあるものの)株価の持続的上昇」という私の見方をご紹介してきました。
「株価の持続的上昇」という見方は、日経平均株価の「16営業日という過去最長に達した連騰記録や株価水準の高値更新」に見られるように正解と評価できると考えます。しかし、「(緩慢ではあるものの)」との見方はここ2カ月に焦点を当てる限り、正しい予測とはいえません。
そこで、今回のコラムでは、「なぜ、約2カ月間で株価は約15%も上昇したのか」を、反省を込めて考えたいと思います。
まず、前提として、「①世界経済が(新興国も含め)同調的な成長局面にあること」、「②企業収益が好調であること」、「③特に日本においては経済停滞を抜け出す期待」が、株価の中長期的な上昇要因となっていると私は考えています。
しかし、これだけでは、ここ2カ月間程度のタイミングで、15%も上昇した理由としては、弱いように思います。
それでは、なぜ、このタイミング、期間で株価は約15%も上昇したのでしょうか?
これについては、株価上昇という事実と過去2カ月程度に発生した事象を振り返り、「(投資家が嫌う)不透明感」の後退がいくつもの事象で起こったことが、大きな株価上昇を生み出したという結論に私は至りました。
事象が確定する前、あるいは後に、(ケースに応じて)株価はその影響を織り込むと考えられているため、個別の株価上昇の背景となる事象を客観的に特定することは難しいのですが、「ここ2カ月間程度で不透明感が後退した事象」と私が考えるものは、以下の通りです(図表1)。
※なお、略称については、以下をご参照:FRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)
※筆者が重要と考える順序で記載
もちろん、北朝鮮情勢はいつ緊張感が高まるかは予測不能ですし、米国税制改革の行方やカタルーニャ独立問題、原油価格に影響を与えかねないサウジアラビアでの王子や閣僚などが一斉に逮捕された事件、サウジアラビアとイランの関係悪化、本邦一部企業の不祥事問題など、不透明感がある事象はまだ存在します。
しかしながら、図表1を改めて見た場合に、どの事象も一歩間違えれば経済・投資環境の大きな混乱要因になりうるものであったことがお分かりいただけると考えます。
最初に申し上げた通り、我が国株式市場の上昇ピッチがいささか急であったことは否めません。
しかし、中長期的観点で見た場合に、株価上昇の前提である経済や投資の基礎的な条件が変化する兆しは、いまのところ見いだせないように思います。
(2017年11月10日 9:00執筆)
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柏原 延行