厚生年金と国民年金は老後の生活を支える収入の柱となるものです。この老齢年金は原則65歳以上の方が受給できます。
厚生年金と国民年金の支給額については、毎年様々な角度から見直し・調整がなされていますが、2023年度の厚生年金と国民年金は2022年度よりも増額となりました。
しかし、年金受給額が増額になったとはいえ、年金だけで生活できるかといえばやはり十分ではないと感じる方が多いのではないでしょうか。
今回は、高齢者世帯のうち、年金だけで生活している世帯はどれほどあるのか、高齢者世帯の収入には年金以外にどのようなものがあるのか、収入の内訳について解説します。
1. 2023年度「国民年金と厚生年金」は増額へ
日本年金機構によると、令和5年度の年金支給額は2022年度に比べて増額されました。年金支給額は賃金や物価などの変動に合わせて毎年見直され、改定されています。
1.1 2023年度の年金額は?2022年度との違い
厚生労働省によると、令和5年度の年金支給額は67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ)に対しては令和4年度から原則2.2%の引き上げ、68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ)に対しては令和4年度から原則1.9%の引き上げとなります。
1.2 2023年度の国民年金と厚生年金の金額は
【国民年金】2023年度の国民年金は、満額の場合6万6250円です。2022年度では6万4816円でした。国民年金は、40年間(480カ月)納付した場合に満額が支給されます。
【厚生年金】厚生年金の受給額は2023年度で、22万4482円です。2022年度では21万9593円であり、2.2%ほど増額されています。
この厚生年金額は、会社員の方が40年間、平均年収を約530万円(報酬月額43万9000円)で、扶養される配偶者は無職あるいは自営業で40年間国民年金に加入した場合を想定して算出しています。
2. 年金受給者の収入は?
では、年金受給世帯の収入とはどのような内訳になっているのでしょうか。
各種世帯の所得の種類別1世帯当たり平均所得金額の構成割合をみると、高齢者世帯の収入額は318万3000円、年金受給額は199万9000円、構成比でみると「公的年金・恩給」が62.8%、「稼働所得」が 25.2%となっています。
高齢者世帯において、年金受給額以外の所得にはどのようなものがあるかを見てみると、働いて得る稼働所得が一番大きな割合を占めています。
次いで仕送りや個人年金、企業年金など他の所得や財産所得(利子や株式配当、住宅や設備等の賃貸料など)があります。
年金で不足する部分を、働いて得る、子どもなどからの仕送りを受ける、などそれぞれの家族環境や財産状況などに沿った方法でなんらかの補てんをしていることが分かります。
3. 年金だけで老後の生活を成り立たせるのは難しい
厚生年金と国民年金の受給額だけで、老後の生活をまかなっていくことはできるのでしょうか。高齢者の収入実態をみていきましょう。
3.1 約4割が年金だけで生活している
公的年金・恩給を受給している高齢者世帯において収入のすべてが「公的年金・恩給」だという世帯は 44.0%となっています。
この結果から、「高齢者世帯の44%が年金受給額だけで生活を成り立たせている」という言い方ができることになりますが、高齢者世帯において貯蓄を取り崩しているという状況もみられており、厚生年金、国民年金だけで暮らしているとは言いきれないようです。
3.2 高齢者の4割が生活のために貯蓄を取り崩している
2022(令和4)年の貯蓄の状況をみると、高齢者世帯において「貯蓄がある」と回答したのは 80.7%を占めていて、「1世帯当たり平均貯蓄額」は 1603万9000円となっています。現在年金を受給していている高齢者はどの世代よりも多くの貯蓄額を保有しています。
一方で2022年の調査で世帯主の年齢階級別に貯蓄の増減状況をみると、前年と比べて「貯蓄が減った」と回答した割合は全世代で36.3%となっており、60歳以上においては 4割を超えていました。
貯蓄の減った世帯の減額理由をみると、60歳以上の世代において「日常の生活費への支出」が75%を超えていました。ここから、高齢世帯においては生活費の不足分を貯蓄から補てんしている傾向があることがわかります。
4. 高齢者の年金と収入まとめ
データからみると現在の年金生活者の44%が年金だけで生計を立てていて、半数以上の高齢者世帯が年金額の収入だけでは生活費をまかなうには十分ではない状況です。
厚生年金の受給額は人それぞれ違いますし、生活にかかる金額も家計ごとに違いがあるため、いくら厚生年金と国民年金を受け取れば年金だけで生活できるのかは一概にはいえません。
老後に年金額だけでは生活できない場合に備えて、不足分の補てんを現役世代のうちから準備しておく必要があります。少しずつでも良いのでできることから始めましょう。
参考資料
高橋 禎美