【児童手当拡充】扶養控除が廃止になったら?年収別に「実質増える額」を試算
2011年に「所得控除から手当へ」の観点から、年少扶養控除が廃止された経緯があるため、児童手当の拡充によって、再び扶養控除を見直すことが考えられます。
扶養控除が廃止となれば「所得税38万円、住民税33万円」の控除がなくなるので、税の負担が増えることになります。そこで、児童手当で増える金額から扶養控除の廃止によって増税となる金額を引いた「実質増える額」を年収ごとに試算してみたいと思います。
前提として、「夫婦(配偶者を扶養している)と高校生の子ども1人」の3人家族を想定します。所得控除は「給与所得控除、配偶者控除、基礎控除、社会保険料控除のみ」とし、復興特別所得税は考慮しません。住民税は課税所得金額の10%とします。
年収400万円
- 所得税:約1万9000円増
- 住民税:約3万3000円増
- 合計:約5万2000円増
児童手当(年間12万円)との差額:約6万8000円
実質増える額は約6万8000円となります。
年収600万円
- 所得税:約3万8000円増
- 住民税:約3万3000円増
- 合計:約7万1000円増
児童手当(年間12万円)との差額:約4万9000円
実質増える額は約4万9000円となります。
年収800万円
- 所得税:約7万6000円増
- 住民税:約3万3000円増
- 合計:約10万9000円増
児童手当(年間12万円)との差額:約1万1000円
実質増える額は約1万1000円となります。
年収1000万円
- 所得税:約7万6000円増
- 住民税:約3万3000円増
- 合計:約10万9000円増
児童手当(年間12万円)との差額:約1万1000円
実質増える額は約1万1000円となります。
年収1200万円
- 所得税:約8万7400円増
- 住民税:約3万3000円増
- 合計:約12万400円増
児童手当(年間12万円)との差額:▲約400円
約400円のマイナスとなります。
年収800万円になると、年間で1万円程度のプラスにしかなりません。年収1200万円ではマイナスになります。
所得制限が撤廃されても扶養控除が廃止になると、年収800万円以上の世帯では、延長された高校3年間の児童手当支給のメリットはほとんどないといってもいいでしょう。
気になる財源は?
児童手当の拡充などが盛り込まれた「こども未来戦略方針」の財源について、政府は徹底的な歳出改革を行い、実質的な追加負担を求めることなく、新たな支援金の枠組みを構築する考えを示しています。
また、歳出改革の完了に複数年を要することで生じる財源不足については、「こども特例公債」を活用すると述べています。
これは「消費税など増税によって捻出はしない」ということであり、その点は安心できますが、「新たな支援金」をどのように集めるのかは気になるところです。
子育て世代を支援する一方で、新たに国民の負担が増えることにならないように、注視していく必要があるでしょう。
参考資料
- 内閣府「児童手当制度のご案内 子ども・子育て本部」
- 首相官邸ホームページ「令和5年6月13日 岸田内閣総理大臣記者会見」
- 国税庁「No.1180 扶養控除」
- 東京都主税局「個人住民税 | 税金の種類 |」
- 協会けんぽ「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
- 財務省「扶養控除の見直しについて(22年度改正)」
石倉 博子