岸田首相は6月13日、「こども未来戦略方針」の閣議決定を受けて記者会見を行い、児童手当の所得制限の撤廃、支給期間の3年間延長、さらに第3子以降は3万円に拡充することを正式に表明しました。

2024年10月から実施する考えを示しており、実際に支払われるのは2025年2月からとなる模様です。 
 
この決定を受けて、児童手当が現行の制度からどのように変わるのかを解説するとともに、一方で、扶養控除が廃止される案も浮上していることから、実質、増えるのはいくらになるのか、年収ごとに試算してみたいと思います。

 児童手当の変更点3つ

政府が掲げる“異次元の少子化対策”の具体的な中身となる「こども未来戦略方針」が閣議決定され、児童手当の拡充などが盛り込まれました。
 
現行の児童手当からどう変わるのか、変更点をみていきましょう。

<児童手当の支給額(1人あたり月額)>

出所:内閣府「児童手当制度のご案内 子ども・子育て本部」、首相官邸ホームページ「令和5年6月13日 岸田内閣総理大臣記者会見」をもとに筆者作成

変更点は以下の3つです。

  1. 所得制限の撤廃
  2. 高校生まで支給(支給期間を3年間延長)
  3. 第3子以降は3万円に倍増

 児童手当の変更点1.所得制限の撤廃

現行の制度では所得制限が設けられており、夫婦と子ども1人(※)の場合は、年収の目安として、約918万円~1162万円になると一律5000円になり、年収が1162万円を超えると児童手当が支給されなくなります。

この所得制限が今回の戦略方針によって撤廃されることになりました。
 
※年収103万円以下の配偶者と子ども1人など、扶養親族が2人の場合

児童手当の変更点2.高校生まで支給

現状の児童手当は中学生まで支給され、高校生になると扶養控除の対象となります。

扶養控除は16歳から19歳までは38万円(住民税は33万円)、19歳から23歳までは63万円(住民税は45万円)の控除が受けられます。

今回の決定で、高校生までの3年間支給が延長されることで、扶養控除が見直される可能性があります。児童手当と扶養控除の関係については次項で詳しく説明します。

児童手当の変更点3.第3子以降は3万円に倍増

これまで第3子以降の増額は3歳から小学生までの10年間でしたが、18歳以下の全期間で増額となります。そのため、3人の子どもがいる家庭では、子どもたちが高校を卒業するまでの児童手当の総額は、最大で約400万円増の1100万円となります。

ただし、これについては、留意しておかなければならない問題があります。

現状の児童手当では、「第3子以降」とは高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育している児童のうち、3番目以降となっています。

そのため、今回の3万円倍増もこの方針に沿って考えると、第1子が高校を卒業してしまうと第2子が第1子となり、第3子は第2子となって3万円の児童手当は受けられなくなります。

つまり、児童3人で最大となる総額1100万円は三つ子に限られ、年の離れた兄弟では恩恵が少なくなってしまいます。