非正規労働者の待遇が改善しているのに、正社員の給料が上がらないのは、正社員が会社から見て「釣った魚」だからです。正社員は、終身雇用で年功序列賃金ですから、賃上げをしなくても辞めないのです。
年功序列賃金というのは、若い時には会社への貢献よりも少ない給料を受け取り、ベテランになると会社への貢献より多い給料を受け取る(生涯を通じた損得はない)という制度です。したがって、正社員としては、会社を辞めて転職して「転職先への貢献度合いに応じた給料」を受け取るよりは、将来も今の会社にいて「貢献度合いよりも多い給料」を受け取った方が得なのです。だから、賃上げをしなくても辞めないのです。
初任給、中小企業の給料は上昇の兆し
正社員でも、初任給は上がり始めています。採用戦線が超売り手市場となっているため、初任給を引き上げないと優秀な人材が確保できないからです。学生が先輩訪問をしそうな若手社員の給料も、ある程度上げておく必要があるでしょう。
本来ならば、「学生が生涯所得を見て就職先を決めるので、全社員の給料を上げる必要がある」はずなのですが、実際には学生は若手の給料だけしか見ない場合が多いので、若手の給料だけが上昇しているのです。
中小企業にも、賃上げの兆しが見え始めています。中小企業は、大企業と比べて終身雇用、年功序列賃金の制度が明確でありませんし、大企業と比べると給料の水準がだいぶ低いので、賃上げをしないと大企業に労働者を引き抜かれてしまう可能性もあるからです。日本では労働者の多くは中小企業に勤めているので、中小企業の賃上げが本格化してくれば、素晴らしいことですね。
正社員の賃上げが行われなくなったのは、株主重視が原因
昔は大企業も普通に賃上げが行われていました。「会社は家族、会社は社員の共同体だから、儲かったら社員に報いるのが当然」と皆が考えていたからです。