産前産後の期間中は、多くの場合収入が減ります。
最近では父親が積極的に育休を取得するケースも増え、育児に参加しやすくなった一方で、収入が気になるという夫婦もいるでしょう。
会社員や公務員の場合、産前産後休業保険料免除制度により、保険料の支払いが免除されます。
では厚生年金に加入しないフリーランスや自営業者の場合はどうなのでしょうか。
国民年金と産前産後の保険料の関係について見ていきましょう。
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1. 国民年金と厚生年金とは
まずは国民年金と厚生年金の違いについて簡単におさらいしましょう。
日本の公的年金は、下図のように2階建ての構造となっています。
1.1 国民年金
日本に住む原則20~60歳未満の方が加入するのが、1階部分にあたる国民年金です。
保険料は一律で、2023年度は1万6520円(月額)。
加入者は働き方により第1号被保険者~第3号被保険者にわかれます。
- 第1号被保険者:自営業やフリーランス、無職、20歳以上の学生など
- 第2号被保険者:公務員や会社員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者
保険料を納付して受給資格が得られると、将来は老齢基礎年金が受給できます。
1.2 厚生年金
公務員や会社員などの第2号被保険者は、国民年金に上乗せして2階部分の厚生年金にも加入します。
現役時代の報酬に応じた等級で厚生年金保険料が決まり、加入期間や納めた保険料によって、受け取れる年金額が変わってきます。
受給資格を満たす方は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が受給できるという仕組みです。
厚生年金の保険料は、産前産後休業保険料免除制度や育児休業保険料免除制度により、産前産後・育休中に免除されます。
また、育児休業等終了時改定により標準報酬月額の改定が行われるため、復職後も実際の報酬の低下に応じた保険料負担で済むよう配慮されています。
2. 国民年金保険料も産前産後期間の免除制度が開始
これまでフリーランスや自営業者の場合、先のような産前産後期間の免除制度がなかったため、出産前後でも保険料を支払う必要がありました。
しかし、2019年4月から国民年金保険料の産前産後期間の免除制度が始まったのです。
これにより、国民年金第1号被保険者であっても国民年金保険料が免除されることとなりました。
産前産後期間として認められた期間も、被保険者の年金額を計算する際には、保険料を納めた期間として扱われます。
2.1 国民年金保険料が免除される期間
免除される期間は、出産予定日、または出産日が属する月の前月から4ヵ月間の産前産後期間となります。
ただし、双子以上の多胎妊娠の場合、出産予定日または出産日が属する月の3カ月前から6カ月間が対象です。
2.2 国民年金保険料が免除される対象者
「国民年金第1号被保険者」であり、出産日が平成31年(2019年)2月1日以降の方が対象となります。
特に所得制限等は設けられていません。
2.3 申請方法
住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ届書を提出するか、郵送でも手続きが可能です。
出産予定日の6カ月前から届出可能なので、早めの手続きをおすすめします。
3. 産前産後の年金保険料は免除される
国民年金加入者であっても、申請することで出産前後の年金保険料は免除されます。
出産前後は仕事をすることが難しく、収入が大きく減るケースが多いです。ただでさえ出費が続く時期なので、こうした免除制度はしっかり知っておきましょう。
産後はバタバタすることも多いので、事前に申請することをおすすめします。
厚生年金加入者の方は、産休期間や育休期間の保険料免除手続きは会社がしてくれます。
この場合でも、手続きに漏れがないか念のために確認しておきたいですね。
参考資料
- 日本年金機構「あ行 育児休業等終了時改定」
- 日本年金機構「育児休業中の厚生年金保険の保険料はどうなるのですか。」
- 日本年金機構「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」
- 日本年金機構「国民年金被保険者関係届書(申出書)」
太田 彩子