健康保険の財政が苦しいならば、保険料よりも非感染症の診療時の自己負担割合を引き上げるべきでしょう。(経済評論家 塚崎公義)
後期高齢者の医療保険料が引き上げに
少子高齢化により健康保険の財政は悪化しており、後期高齢者の医療保険料の上限が引き上げられることになっています。
現役世代の負担を抑えるとともに、出産育児一時金を増額する狙いとのことですから、目的は是とされるでしょう。今後も少子高齢化が進むであろうことを考えれば、後期高齢者に負担増をお願いすることには異論はありません。
しかし、どうせ負担増をお願いするなら、保険料ではなく、医療費の自己負担割合の引き上げをお願いすべきでしょう。
「自己負担割合」を引き上げれば、シニアの行動が変わる
診療コストが1万円で、自己負担割合が1割だとすると、自己負担額は1000円です。
この診療を受けることによるメリットが1500円の食事をするメリットと同じであれば、後期高齢者は食事より受診を選択するでしょう。その結果、健康保険組合は9000円の負担を強いられることになるわけです。
しかし、自己負担割合が2割に引き上げられれば、後期高齢者は受診より食事を選択するでしょうから、健康保険組合は9000円の負担を免れることになります。
保険料を引き上げても、後期高齢者の行動を変えることはできないので、健康保険組合が得るものはわずかな保険料だけです。しかし、自己負担割合を引き上げれば後期高齢者の行動を変えることができるので、効果が大きいというわけです。
そんなことをしたら医者が失業してしまう、と心配する人がいるかも知れません。しかし、高齢化社会で医療の需要が増えていくことが予想されているのですから心配は無用でしょう。
むしろ、「3時間待って3分診療を受ける」といったことが減り、待たされている時間が不要になるというメリットが大きいでしょう。