3. 厚生年金の経過的加算とは

厚生年金に加入している場合は、国民年金の任意加入はできません。

それでは60歳以降も仕事をして厚生年金に加入している場合、国民年金の未納期間を納付済にして年金額を増やすことはできないのでしょうか。

答えは厚生年金の経過的加算によって同様のことができます。

経過的加算は、1985年の改正によって基礎年金制度ができたことで設けられました。

それまでの厚生年金の1階部分に相当する老齢年金である定額部分は、改正後の1階部分にあたる基礎年金よりも高額であったため、経過措置として、定額部分と基礎年金の差額分を老齢厚生年金に加算しました。これが経過的加算です。

「経過的加算額」=「定額部分」-「厚生年金の加入期間に係る基礎年金部分」

しかし現在は、定額部分と基礎年金の単価はほぼ同額となっているため、差額を埋め合わせる意義はなくなってきています。

一方、老齢基礎年金の年金額の算定期間は20歳以上60歳未満としているため、20歳前や60歳以降に厚生年金の加入期間がある人は、その期間に対応する定額部分相当額を厚生年金に加算して支給します。

これも「経過的加算」といい、こちらが中心的な意義となっています。

先述したように、定額部分相当額と基礎年金の満額はほぼ同額となっているので、たとえば、学生時代に2年間未納期間があった場合に、2年間任意加入して増える老齢基礎年金額と60歳以降に2年間厚生年金に加入して増える経過的加算額はほぼ同額です。

つまりこれは、老齢基礎年金の金額に反映しない老齢基礎年金相当額が、経過的加算として厚生年金に上乗せされたものといえます。

老齢基礎年金が満額となる480月に達するまで、厚生年金に加入して保険料を納付すれば、経過的加算によってカバーすることができます。