1. 「老後2000万円問題」とは何だったのか
老後2000万円問題の発端となったのは、金融庁の金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容です。
本資料で用いられたのは、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均的な1ヵ月の収支でした。
- 実収入(主に年金):20万9198円
- 実支出(主に食費):26万3718円
- 月々の赤字額=約5万5000円
老後必要額=5.5万円×12ヵ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円 ※約2000万円
これが「年金以外に老後では2000万円が必要になる」という根拠です。しかし、ここで使われている収支は2017年時点のものです。
2023年を迎えた今、物価上昇の波をひしひしと感じている方も多いことでしょう。
物価が上昇し、インフレが進んでしまうと、2000万円では足りない可能性も出てくるのです。
一方で、もう一つ重要な落とし穴があります。それは「平均値」を使っていることであり、言わずもがな個人差が生まれてしまうのです。
例えば、実支出である26万3718円の中には、住居費が1万3656円しか入っていません。
賃貸住まいの方の場合、家賃の上乗せがさらに必要となるでしょう。
反対に単身世帯の場合、支出が20万円にも満たないこともあります。もし十分な年金が受け取れるのなら、2000万円もお金は必要ないことになります。