大きな理由はまず、前述したように超低金利下でも10%超の金利収入が見込めること。さらに銀行ならではの顧客との接点を生かして新規開拓ができるのも大きな特長です。

消費者金融業者の場合、いくら無人契約機であっても、運転免許証などの本人確認書類や源泉徴収票などの収入証明書類を用意して申し込みに行くのは大きなハードルです。ところが、銀行のカードローンであれば、「キャッシュカードにカードローン機能を付加しませんか」というだけでいいのです。

住所もわかっているので、ダイレクトメールを送ることもできます。銀行によってはATMを利用するだけで「このままカードローンの申し込みができます」と表示されるところもあります。きわめて簡単に利用できるのです。

そのようにむやみに貸し出して、貸し倒れなどのリスクはないのかと思うかもしれません。多くの銀行は審査や回収に保証会社を利用しています。万一、貸し倒れとなっても、それを負うのは保証会社です。銀行のリスクは小さいのです。

自主規制の足並みがそろうのはこれから

こうしたなか、銀行による過剰融資が多重債務問題につながりかねないと懸念する声が増えています。これを受けて全国銀行協会では、ローン審査の厳格化などに向けた対応を行うと発表しました。

各銀行に利用者の年収を把握したり、貸金業者からの借り入れ状況を確認したりするように要請し、過剰融資を抑え、多重債務者を増やさないようにするとしています。

ただし、具体的な取り組みは各銀行にゆだねられています。銀行によっては、借入額が一定の額を超える場合、年収確認書類の提出を求めるところも出てきました。とはいえ、足並みはそろっておらず、「年収の3分の1」などの融資枠の厳格化について「見直す予定がない」と語る銀行もあります。

審査が緩いところが利益を伸ばすような抜け駆けが増えると、貸金業法の改正のように法律で規制されることになりかねません。各銀行では他行を眺めながら、自主規制のあり方を模索しているようです。

上山 光一