自己破産をする人が増えています。最高裁判所の発表によると、2016年の個人の自己破産の申請件数は6万4637件で、前年比1.2%増となっており、13年ぶりに増加しました。個人の破産申請は、1990年代後半に急増し、03年に24万2357件とピークに達した後、翌年から12年連続で減少していました。

それにはどのような理由があるのでしょうか。日本弁護士連合会(日弁連)は、銀行のカードローンの過度な貸し付けが問題だと指摘しています。銀行などによる消費者向け貸付けが急激に増えており、カードローンなどの残高は、2013年3月時点では3兆5442億円だったものが、2016年3月には5兆1227億円と、短期間で急増しています。

銀行や信用金庫、信用組合などは総量規制の対象外

銀行がカードローンなどの個人ローンの拡大に力を入れています。背景には、マイナス金利政策の影響で企業向け融資の利ざやが縮小していることが挙げられます。特に地方銀行にとっては厳しい経営環境が続いています。

一方でカードローンであれば、このような低金利下でも10%超の金利収入が見込めます。実際に多くの銀行では、カードローンが業績に大きく貢献するようになっています。

「サラ金」などと呼ばれた消費者ローンについては、借金を返すために借金を重ねる多重債務が社会問題となりました。金融庁は2010年6月、貸金業法を改正し、上限金利の引き下げや貸付総額を年収の3分の1までにする総量規制を導入しました。

実は、銀行や信用金庫、信用組合などは、貸金業法の対象ではありません。このため、総量規制も受けません。収入証明書の提出なども不要です。批判を受けていることから、最近は少なくなりましたが、以前は「収入証明書不要!」などと大きく書かれた銀行のカードローンの広告を電車の中などでよく見かけました。

広告の表現がおとなしくなっても、銀行のカードローンでは、実際には依然として返済能力を上回る融資が行われているという声が少なくありません。

銀行にとってカードローンはリスクが少なくリターンが大きい事業

銀行のカードローンの問題が指摘されるようになって何年にもなります。といっても、「わが行は、カードローンから撤退します」というような銀行はありません。なぜなら、銀行にとって、カードローンはリスクが少なくリターンが大きい”おいしい”ビジネスだからです。