4. 不測の事態で、年金の繰り下げ途中で年金をまとめてもらいたいときは?

年金の損益分岐点を確認し、繰り下げ受給を選んでも、不測の事態により、まとまったお金が必要になることがあるかもしれません。

その場合、今までもらわなかった年金を5年分さかのぼって一括受給することができます。

ただし、年金には「権利が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅」というルールがあります。

72歳まで繰り下げて、年金の一括受給をしたくなった場合を考えてみましょう。

4.1 現行で一括受給をした場合

この場合、年金受給権が発生するのは、65歳です。

【一括で支払われる年金】

  • 72歳時点から5年前(67歳)までの年金は、増額なしで一括支給
  • 65歳・66歳分の年金は、時効により消滅

【72歳以降支払い年金】

  • 増額なしの年金が支給される

4.2 2023年(令和5年)4月以降開始の「繰り下げ申し出みなし制度」の場合

2023年4月からは、5年前に繰下げ受給の請求があったものとみなされ、増額された年金が一括受給できる制度がはじまります。

上述と同じ、72歳に年金の一括受給をする場合は、次のとおりになります。

【一括で支払われる年金】

  • 72歳から5年前の67歳時点の増額率「0.7%×24か月=16.8%」が適用され5年分が一括支給

【72歳以降支払い年金】

  • 16.8%増額された年金額が支給される

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

なお、65歳からの年金をさかのぼって受け取るときの特例は、昭和27年4月2日以降に生まれた方(または平成29年4月1日以降に受給権が発生した方)で、2023年(令和5年)4月1日以降に年金の請求を行う方が対象です。