「会計年度任用職員制度」がもたらす弊害
会計年度任用職員制度の導入により、以下の弊害が起きています。
- 業務実績に関係なく、定期的に公募による採用試験を受けなければならない
- 採用試験が不合格の場合、雇い止めとなる
- 自分が採用されたことで職を追われる職員や、不採用となった一般応募者への罪悪感でメンタル疾患になる職員がいる
- 公募対象となった職員同士で不和が生じた結果、退職するケースが少なくない
- 会計年度任用職員の大半はパートタイム雇用のため、フルタイム雇用よりも給与が下がるほか、退職金給付の対象外となる
- 会計年度任用職員の3/4が女性であり、任期や採用試験の都合でライフスタイルに大きな影響が出る
- 賞与は支給されるが月々の給料は減額になる
- 給与水準は正規雇用の職員より低いにもかかわらず、業務量は同等のケースが多い
- 熟練度の高い職員が雇い止めになると、安定したサービスの提供ができなくなる
- 公募は欠員補充や新規採用とは異なるため、一般応募者が必ずしも選考を通過するとは限らない
業務知識や経験が豊富な職員でも、公募の時期が訪れれば、採用試験を通過しないと現在と同様のポジションで働けなくなってしまいます。
また、採用試験ではこれまでの経験は一切考慮されないため、試験に合格できなければ例外なく雇い止めとなります。
一般企業には、有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みによって無期労働契約に転換される「無期転換ルール」がありますが、公務員である会計年度任用職員はこれに該当しません。
つまり、会計年度任用職員は常に雇い止めの不安を感じながら、同じ立場の職員とポジションを巡って争うプレッシャーと戦っているのです。
更に問題なのは、各種手当や昇給制度が導入されていても尚、低水準で推移する賃金です。
総務省の調査によると、任用団体数が最も多い事務補助職員の時給は「900円超〜1000円以下」の区分が最も多く、団体平均では990円になります。
加えて同調査によると、フルタイムの会計年度任用職員が6万9611人なのに対し、パートタイムは55万2695人と圧倒的に多く、調査人数62万2306人に対し88.8%もの割合を占めている状況です。
フルタイムの会計年度任用職員は正規雇用の職員よりも低賃金ですが、パートタイム雇用ではさらに給与水準が低下し、退職金も支給対象外です。
また、こうした会計年度任用職員の問題は、行政サービスを受ける我々も無関係ではありません。
業務に精通した会計年度任用職員が、公募による採用試験で不採用になると、これまで受けていたサービスの質が低下する恐れがあります。
官製ワーキングプア問題解消のために導入された制度が、さらなる問題を引き起こしている。これが公務員採用の実情なのです。