20年間の可処分所得の推移

二人以上の世帯のうち、勤労者世帯の1カ月の「実収入」から、税金や社会保険料などの自由にならない支出である「非消費支出」を引いて「可処分所得」を出しています。

2000年から2021年までの推移をみてみましょう。

可処分所得の推移

出所:総務省「家計調査/家計収支編/二人以上の世帯のうち勤労者世帯」をもとに筆者作成

2000年から可処分所得は下がり続け、2011年の42万1000円が底となり、その後は42万円台で推移、2018年あたりから上昇をしています。

ただし2020年はコロナ禍における経済対策としての各種給付金が可処分所得を押し上げている面もあり、その点は留意しておきましょう。

家計調査から可処分所得を取り出して時系列に並べてみると、10年前から徐々に可処分所得が増えてきていると捉えることができます。

はたして長年家計管理をしている人にとって、可処分所得が増えてきている実感はあるでしょうか。

収入が増えても支出がそれを上回れば、家計は苦しいままです。そこで、家計調査の可処分所得に、物価上昇分を加味した実質的な可処分所得(実質可処分所得)にして推移をみてみましょう。

家計調査から抽出した可処分所得を消費者物価指数(2015年基準、持家の帰属家賃を除く総合指数)で割って、実質値を算出しました。

実質可処分所得の推移

出所:総務省「家計調査/家計収支編/二人以上の世帯のうち勤労者世帯」と「2015年基準消費者物価指数(CPI)」 をもとに筆者作成

実質可処分所得にすると、2011年では下げ止まらず、2015年まで下がっています。

そこから増えていきますが、2021年の実質可処分所得は2000年とほぼ同じとなっています。

物価上昇を加えると、長い期間、可処分所得が減ってきていることがわかります。そして直近の5年間で20年前の水準にようやく戻ったといえるでしょう。

ただし2022年10月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が、去年10月と比べて3.6%上昇しました。

3.6%の上昇率は、第2次オイルショックの影響が続いていた1982年2月以来、40年8カ月ぶりの水準です。

原材料価格の上昇と急速な円安が影響して、値上げラッシュとなったことが主な要因です。可処分所得が増えても、物価上昇がそれ以上であれば、家計は負担を強いられます。