国税庁の民間給与実態統計調査によると、令和3年度の平均年収は443万円となり、この30年間大きく変わっていません。

しかし生活は段々と苦しくなっていると感じている人は多いのではないでしょうか。

そこで、実際に使えるお金「可処分所得」に注目して、この20年間の変化を見てみたいと思います。

【平均年収400万円台】2000~2001年までの推移を確認

国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査」による平均給与は、1年間の給料・手当および賞与を合わせた支給総額の平均を表したもので、平均年収にあたるものです。

2000年から2021年までの推移を見てみましょう。

平均年収の推移1/3

平均年収の推移

出所:国税庁「民間給与実態統計調査結果 1総括表」をもとに筆者作成

平均年収は2000年から減り続け、2009年にリーマンショックの影響で405万9000円まで落ち込みます。

そこからは上下しながら徐々に増加し、2018年には440万7000円まで回復するものの再び下がり、2021年は3年ぶりに上昇しました。

それでも2000年代初期の平均年収には届いていません。

可処分所得とは。わかりやすく解説

一般にいう年収は、税金や社会保険料を引かれる前の額面金額を指します。

年収500万円の場合、実際に銀行口座に振り込まれる金額は個人差ありますが400万円前後になるでしょう。

会社員など給与所得者は、所得税、住民税、社会保険料が天引きされ、残った手取り額が「可処分所得」になります。

そのため家計を把握するには、年収ではなく、自分で自由に使えるお金「可処分所得」が重要になります。

前出の平均年収は、給与収入のみであるため、範囲を広げて財産収入や社会保障給付なども入れた実収入から、税金と社会保険料などの非消費支出を引いて出した可処分所得をみてみたいと思います。

20年前からどのように変化しているのか、総務省の家計調査から検証してみます。

20年間の可処分所得の推移

二人以上の世帯のうち、勤労者世帯の1カ月の「実収入」から、税金や社会保険料などの自由にならない支出である「非消費支出」を引いて「可処分所得」を出しています。

2000年から2021年までの推移をみてみましょう。

可処分所得の推移2/3

可処分所得の推移

出所:総務省「家計調査/家計収支編/二人以上の世帯のうち勤労者世帯」をもとに筆者作成

2000年から可処分所得は下がり続け、2011年の42万1000円が底となり、その後は42万円台で推移、2018年あたりから上昇をしています。

ただし2020年はコロナ禍における経済対策としての各種給付金が可処分所得を押し上げている面もあり、その点は留意しておきましょう。

家計調査から可処分所得を取り出して時系列に並べてみると、10年前から徐々に可処分所得が増えてきていると捉えることができます。

はたして長年家計管理をしている人にとって、可処分所得が増えてきている実感はあるでしょうか。

収入が増えても支出がそれを上回れば、家計は苦しいままです。そこで、家計調査の可処分所得に、物価上昇分を加味した実質的な可処分所得(実質可処分所得)にして推移をみてみましょう。

家計調査から抽出した可処分所得を消費者物価指数(2015年基準、持家の帰属家賃を除く総合指数)で割って、実質値を算出しました。

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実質可処分所得の推移

出所:総務省「家計調査/家計収支編/二人以上の世帯のうち勤労者世帯」と「2015年基準消費者物価指数(CPI)」 をもとに筆者作成

実質可処分所得にすると、2011年では下げ止まらず、2015年まで下がっています。

そこから増えていきますが、2021年の実質可処分所得は2000年とほぼ同じとなっています。

物価上昇を加えると、長い期間、可処分所得が減ってきていることがわかります。そして直近の5年間で20年前の水準にようやく戻ったといえるでしょう。

ただし2022年10月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が、去年10月と比べて3.6%上昇しました。

3.6%の上昇率は、第2次オイルショックの影響が続いていた1982年2月以来、40年8カ月ぶりの水準です。

原材料価格の上昇と急速な円安が影響して、値上げラッシュとなったことが主な要因です。可処分所得が増えても、物価上昇がそれ以上であれば、家計は負担を強いられます。

社会保険料や医療費の負担増も。家計への負担は続く

社会保険料はこの20年で増えています。

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料を合わせた保険料率(従業員負担分)は、2000年は13.225%であったものが、2022年では14.97%になっています。

2022年10月から従業員負担分の雇用保険料率が0.3%から0.5%(一般の事業)へ引き上げられました。

医療費の負担も増えています。2022年10月から、75歳以上の一定以上の所得がある人の自己負担割合が2割になりました(2025年9月30日までは配慮措置があります)。

少子高齢化が続く限り、社会保険料や医療費の負担増は避けられないでしょう。

他にも、電気料金やガス料金、ガソリン代などの光熱費・燃料費は今後もじわじわと値上がりが続いていくと思われます。

こうした家計への負担が増えていくと、消費行動は抑制され、経済活動が低迷することで企業の業績が悪化、賃金が上がらないという負のスパイラルに陥ります。

これを避けるには、賃金を上げて所得を増やすしかありません。消費者物価上昇率を上回る賃上げを実現して、可処分所得を増やしていく流れが好循環を生み出すでしょう。

参考資料

石倉 博子