4. 収益不動産を信託財産とするケース

不動産の管理・運営、また売買は、原則、本人の意思により行われなければなりません。

したがって、不動産所有者が自分の意思を明確に示すことができない状況となった場合、収益不動産の売却はもちろんのこと、運営すら厳しい状況になってしまいます。

しかし、家族信託により、不動産を信託財産とした契約をすることで、このような事態を回避できます。

4.1 【事例】たとえばこんなケース

認知症を発症した場合の備え

収益不動産である賃貸マンションから生じる利益を生活の基盤としている父親は、高齢となったことで、不動産の管理が難しくなってきたと感じています。

そこで、息子を受託者として家族信託を締結することにより、収益不動産の管理・運営・売却を息子に託すことにしました。

受益者を父親としておけば、息子の運営により得た収益を父親が受け取ることができるため、父親はこれまでどおりの安定した生活が可能となります。

また、不動産を信託財産としたことで、不動産名義が受託者である息子へ移るため、父親が亡くなった後には、息子の意思で売却することも可能です。

なお、不動産名義を息子へ変更することは父親からの贈与にあたりますが、受益者は父親であるため、息子に贈与税はかかりません。

未成年の子や財産管理が困難な子へ財産を渡したい

収益不動産の利益を孫の教育費や、障害を持つ子の生活費としている場合などでは、本人の意思疎通が困難になってしまった後のことが心配です。

しかし、家族信託の締結により、子どもや孫の生活を守ることが可能となります。

委託者は父親、受益者を孫や子どもに設定し、兄弟、親戚など信頼できる人を受託者に選任して家族信託契約を結んでおけば、毎月、毎年など定期的に子や孫へ収益不動産の利益を分配することが可能です。